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□王子様の探した印は、
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駅までの決して長くない道程を歩きながら、口下手な静雄の提供する話題を訥々と話していた。
思えば、こんな風に彼と話したことは無かった。会えば即刻喧嘩が当たり前だったから。
それが、女装しているだけでこうも違うのだ。それだけで、隣に並んで穏やかに話せる。ばれないで、と願ってしまうほどに。

話題が無くなり話が途切れ、臨也はふと尋ねた。

「でも、どうして店の外にいたんです?偶然だったら凄いですね」

すると、静雄は困ったように頭を掻いた。首を傾げて見せれば、静雄は言いづらそうに口を開く。

「いや、店に入っていくのが見えたんで…話したいな、と思って…」

決してストーカーじゃないんすよ、と焦って付け足す静雄を小さく笑いながら、悩んだ挙げ句に、話したかったんですか、と彼の言葉を反芻しただけで。
何を返せば良いのか、此方まで浮かばなくなってしまうのだ。静雄とこんなに辿々しい会話をかつて一度でもしたことがあっただろうか。
そんなことを思っていれば、静雄は再び呟くように言った。

「何て言うか…あんたを通して、あいつと話してる気がして」

どきり、とした。
――自分の推測が合っていれば、甘楽と臨也は同一人物で、本人と話していることになるのだけれど。
…普段は鬱陶しいほどに拙い雑言を吐き散らしてくるくせに。
たった二文字も言えないなんて。

――これじゃあまるで、言って欲しいみたいじゃないか。
俺が、シズちゃんに、……と。

「その人も、」

「…はい?」

此方を見た視線は優しく、何処か切なく。

「…その人も、案外貴方のこと好きかもしれないじゃないですか」


何を言ってるんだ、俺は。
告白されたいとでも?喧嘩相手に?
…分かっているのだ。本当は、自分の心の中で彼がどんな位置にいて、どれ程大きな存在であるか。

「…嫌われてるから、無理だと思うけど、な――」

静雄は、ぽつんと呟いた。



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