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□年下恋愛事情
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くしゃり。久し振りの感触に、臨也は顔に血が集まるのを感じた。
触れて欲しい。でも恥ずかしい。そんな感情が相まって、中途半端な抵抗しか出来ない。

「何、って、俺は子供じゃないし…っ」

「知ってる。…だから、余計に触れないんだよ。
手前に好きな奴でも出来たら分かるんじゃねぇか?」

静雄の言葉に、臨也ははたりと止まった。
ちょっと待て。確かに、今更だけれど。

「あのさ、俺が好きなのはシズちゃんだよ?それを、好きな奴が出来たら、って」

――あれ。俺は今とんでもないことを口走った気がする。
静雄を見やれば、言葉を消化しきれない顔をしていて。それが余計に、後悔やら羞恥やらを連れてくる。
…でも、嘘じゃないのだ。
それに、先刻の台詞は妙に矛盾を孕んでいた。触れないんだよ、と言うくせに、好きな人が出来たら分かるだろう、なんて。

「所詮、俺は手前の兄貴分でしかねぇだろ。俺も手前が好きだけど――違う」

「訳分かんないんだけど…っ、少なくとも、俺の好きは……」

触れたい。触れたい。

「こういうこと、なんだけど…っ」

身体を伸ばして、瞼をきゅっと閉ざし。
柔らかい感触を奪った。
ちゅ、と可愛い音がして、恥ずかしさに負けてすぐに唇を離す。

俯き気味に静雄を見上げれば、静雄はぽかんとしていた。
そんな彼を見ていれば胸がきゅうと苦しくなって、ああ、やっぱり愛しいのだ、と認識する。

「俺だって、伊達に十年近くシズちゃんだけを想ってたわけじゃないんだから…っ
俺はずっとシズちゃんが好きで――」

…臨也の言葉は、静雄の唇に吸い込まれた。
一瞬何が起きたか分からず――舌が割り込んできた頃、ようやくそれがキスだと認識する。
勿論、中学の青春時代を14も年上の青年に捧げてきたのだ。正直なところ、先刻の幼稚園児も出来るキスは小学生の頃ふざけて静雄にして以来。深いものに至っては、初めてだった。

舌…っ!?
これ、え、どうやって息するわけ!?

滑らかな舌の感触に、臨也は一瞬で耳まで真っ赤になる。
勿論、抵抗は出来ず、する気もなく。


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