15万打リクエスト

□情意サミット
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唇を離せば、臨也は赤らんだ顔のまま嗚咽を零した。
ぼろりと零れた涙は、赤く染まった頬を滑って静雄の手の甲に落ちる。
その肩を抱き締めた。

「泣くなって…」

「だって…俺も分かんないんだよ……」

喧嘩相手で、酷く疎ましい奴なはず。なのに、傍にいて欲しい。触れて欲しい。
そんな矛盾に、臨也は追い詰められていた。
今頼りたくなるのはリンチという出来事のせいだ、と思うのに、静雄に拒否されればいいと思うのに、彼が優しいから、何でも聞いてしまうから、余計に分からなくなっていく。
はね除けて欲しい。受け入れて欲しい。
そんな矛盾を前に、泣くことしか出来ない自分が腹立たしくてどうしようもない。

ひっく、と嗚咽を漏らし続ける臨也を抱き締めたまま、静雄は口を開いた。
臨也の首筋に埋められていた表情は、誰にも分からない。

「…何でも良い。とにかく、手前が泣くのが辛いから、だから泣くな。
手前が俺を求めるなら、俺も手前を求める、から…嫌がらせでも、何でも、受け止めてやる…」

耳元で囁かれた声は、胸にじんと染み渡る。
泣きすぎてぼんやりしてきた頭は、もう考えることを拒んでいるようだった。
…でもひとつ分かるのは、彼の言葉に安堵を感じているという事実。

認めたくない。リンチで打ちのめされた挙句彼に弱味を見せてしまったことが発端で、今こんなにも矛盾を抱えているということを。
…でも、もう否定することも出来ないほどに呑まれている。
何も考えたくない。この気持ちが何か、どうして口付けをねだったのか、気づきたくない。
今まで確立されてきた関係が崩れてしまうのは、寒々しくすら感じる。

温かな体温に溶かされるような錯覚すら覚えながら、臨也は瞼を閉ざした。






(これが恋慕というのなら)
(俺たち、馬鹿みたいに滑稽だね)

END
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