15万打リクエスト

□情意サミット
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「シズちゃん、」

不意に紡がれた声は震えていた。ん、と小さく返事をすれば、臨也はコーヒーカップから手を離して膝の上で握りしめる。
きゅ、と一度下唇を噛み締めた臨也は、囁くように言った。

「慰めてくれるなら、…キスしてよ」

静雄は思わず自分の耳を疑った。
返事を出来ないでいれば、臨也はズボンの膝を握り締めた。
他に音がないということは、こんなにも煩わしかったのか。そう思うほどに、静雄は戸惑った。
自分は、嫌なのだろうか。喧嘩相手と、臨也と唇を重ねるということが。
恋人同士のすることを今、慰めという名目でしてしまって良いのだろうか。

黙り込む静雄を見た臨也は、笑みを零した。不意なその笑顔に視線を向ければ、臨也は無理に横に引いた口で言葉を紡ぐ。

「嫌、なら、いいよ。別に、シズちゃんに嫌がらせなんだか―――」

…思わず、唇を重ねた。
泣きそうな顔は、見ていられなかった。泣かせたくなかった。

重なった唇の隙間、息を止めていた臨也が恐る恐るに唇を開いた。
僅かに覗かせた舌は静雄の唇をおずおずと舐める。
けしかけられるがままに舌を舐め返し、そのまま口腔に分け入った。くちゅ、と艶かしい音が唇から零れる。

「ん…はぅ、ふ……はっ、ふぁ…」

舌を甘噛みし、呼吸をしようと開けた唇へ更に深く唇を重ね。
何をしているのだろう。頭の中では誰かがそう投げかけてくるのに、答えることもできないまま唇を重ねる。
同情?そうじゃなくて。欲望?それも少し違う。反抗?そんなものじゃない。
じゃあなんだ。理解を拒んでいる自分は、耳を塞ぐ。


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