頂き物・捧げ物
□つくられた偶然。
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「面白く…なるか…?」
【つくられた偶然】 〜 番外編:知盛ver
「さて、神子殿? もう逃げ場はないぜ…舞殿へお上がりくださいませ。」
舞など見ても興味はなかった。
「見ていこう」という二人の意見に心の中で不服を並べていた。
…散々見てきた。
内裏で競う者たちが…見せる舞。
ただ…競うだけの舞など、
俺は"興味なかった"
******
「代わりに舞ってくれないかな?」
そう、申し立てる白拍子の言葉に、
「出し惜しむほどの舞でもないなら、見せてくれよ。」
と所望の声を重ねる。
見たこともない…神子殿が見せる舞は初めから興味が湧いた。
きっと……俺を楽しませてくれる、と。
確証一つない。
だが、お前は俺を裏切らなかった。
******
「一度なら舞ってやろう……それで、覚えるんだな。」
『一度』といったのは、面倒だったため…。
それも間違いではないが…
『一度』といえば、お前は俺から目を逸らしはしないだろう?
先ほど、この俺が…魅入られてしまったように…
今は…俺がお前の視線を独占する。
ふと、気付いた視線。
それは、源氏の…
神子殿の八葉のもので…
名前は知らなかったが…、そんなことはどうでもよかった。
「共にひとさし、舞わせていただこうか。」
お前と舞いたいと思った…。
それと同時に…お前の八葉がどのような表情を見せるか、見てやりたかった。
敵である俺と背中を合わせ…
動きを重ねる二人を観るヤツの視線は…
心地良いのかもしれない。
「助けてくれて、ありがとう。知盛」
「……助けた覚えはない。」
俺は…面白く舞いたかっただけだ。
「クッ、楽しかったぜ…神子殿。」
共に舞いたいと思ったのは…
それは、お前がお前だったから。
「舞は舞…それ以上の価値など、ないと思っていたが。」
飽きていたはずの舞で…
心地良さが生まれたなど…
「俺らしくもないな。」
<また、機会があれば…>と
速玉大社の鳥居をくぐる神子殿を見遣りながら…呟いてしまっていた。
END
→あとがき