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□入園料、プライスレス
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畜生俺が一体何をした。
と、叫んでやりたい。
………切実に。
今年になって二十六才。社会人四年生の俺には、いわゆる部下ってやつがいる。
「あ、あのっ先輩…コーヒー買ってきたので、よろしければ…」
ずり落ちたメガネを気にする余裕も無く缶コーヒーを差し出すのは、入社したての新人君だ。
童顔に低めの身長。何事にも一生懸命なのは大変可愛らしいが、度々起こすミスはどうにかならないものか。
まぁ、失敗は成功の元ってよく言うし、これから成長していくんだろうからそう怒ってばかりもいられないが。
「ありがと。その辺に置いといてくれる?」
「は、はいですっ!」
…裏返った声で泣きそうな顔されても、困る。
「…作業ももうすぐ終わるし、明日もあるんだから。植野はもう帰っていいよ?」
「でも…」
「大丈夫だから。」
「本当にすみませんでした…では、お先に失礼致します」
植野は深々と頭を下げると、やっぱりチラチラとこっちを気にしながらオフィスを後にした。
まったく、部下の尻拭いも楽じゃない。…まぁ、信頼されてる証拠って言えば聞こえはいいけどな。
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