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□SNOW
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「……エアリス」
逢いたくても逢えない日々。
だからエアリスは毎日、雪があるのが羨ましいと言ったんだろう。
寒い日には俺が抱きしめて暖めるから。毎日寒かったら、毎日抱きしめて暖める。毎日逢えるから。
でも現実は、
ずっと一緒には居られない。
「……ごめん、な。寂しい思いさせて………」
俺はもう一度、エアリスを抱きしめる。彼女が寒くないように。
「ううん……いいの。ザックスがこうしてくれるだけで、いいの」
エアリスの気持ちが痛いほど伝わってきて、胸が刺されるように辛くなった。
「ザックス……?」
エアリスが俺の顔を覗き込んで、不安そうな表情を浮かべた。
きっと、俺が不安そうな表情を浮かべていたからだと思う。
こんなんじゃ駄目だ。
エアリスにこれ以上、辛い思いをさせたくないんだ。
「ね、雪、また降ってる…」
「え……?」
エアリスに促されて教会の天井を見上げると、さっきは小さかった粉雪が大きい結晶となり舞落ちている。
「いっぱい降る、かな」
「……そうだな」
「ねえ、ザックス」
「ん…」
「もっと好きな人を抱きしめなさいって、雪は降るのかな………」
「え……?」
そう言って、エアリスは俺を抱きしめた。
「素敵な贈り物、だね」
そうだな───……
毎日、雪が降るのも悪くない。
エアリスを抱きしめられるなら。
「今度、アイシクルロッジに連れてってやる」
「ほんと?」
嬉しそうに、エアリスは笑う。
その顔が見られるのなら俺は何だってしたいと思った。
「毎日、雪、降るから……」
そう、そうすれば………
「毎日、抱きしめてやる」
その言葉に透き通るような白い肌が赤らむ彼女の頬。恥ずかしそうに躰を抱きしめてくるその仕草は愛おしくて堪らない。
その時、エアリスはまるで白い雪のようだと俺は思ったんだ。
やっぱり俺、雪は好きだ。
だって、
俺はエアリスが好きだから。
END.