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□Bitter
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思ってもいない事に俺は目を瞑る事すら忘れて固まってしまった。
「ごめん、ね」
「……なに…?」
「チョコレート……苦くて」
「へ?」
「チョコレート作ったの、苦くなっちゃった」
「作ってくれたのか!?」
「でも、失敗、だから……」
どうやらエアリスは俺に手作りのチョコレートを用意してくれてたらしい。それがわかっただけでも俺は嬉しくて仕方がなかった。
でもそのチョコレートは苦くて、エアリスにとっては失敗らしい。だから今までバレンタインの事は黙っていたようだ。
じゃあ
キスは
チョコレートの代わり?
「だからもしかしてキスした?」
顔を真っ赤にして、こくんと頷くエアリスの姿があまりにも可愛すぎて俺は思わず抱きしめた。
「そのチョコレートは?」
「………ある、けど」
「食べたい」
「苦い、から……」
「エアリスが作ってくれたんなら食べたい」
「………」
エアリスはザックスから離れると祭壇の裏に隠してあったピンクの箱を恐る恐るザックスに渡す。
白いレースのリボンを解くと、その中にはパウダーが振り掛けられた、まあるいチョコレートがいくつも入っていた。
「マジでうまそうだし!」
「………やっぱり、食べないほうがいい」
エアリスはザックスからチョコレートを取り上げる。