歌姫様

□名前 ☆
3ページ/9ページ







『タオルここに置くよ』

『シャンプー切れてたね、これ使って』

『あんまり熱くしないでよ?肌に悪いから』

『ちゃんと肩まであったまってね』


「………」

変な男だ、と、貴教は思っている
だって自分を監禁して好き勝手犯してるくせに、変なところで優しいから

「…ごぼごぼごぼ」

変な気分
Gacktに無理矢理好き勝手に抱かれるのは嫌
でもGacktが仕事で居ないのはもっと嫌
何で?どうして?
どうしてGacktが居ないと寂しいの?

変なのは自分?

「………」

ふと視界に入った赤く擦り切れた手首を見て、貴教は頭を振った

『まだあがらないの?』

不意に響いた低い声
貴教は慌てて声を出した

「ッい、今上がる!」

バタバタと着替え、風呂から上がると、Gacktがソファーで微笑んでいた

「コーヒー入れてたから飲みなよ、僕もシャワー浴びてくるから」
「………」

ソファーに座ると

「手出して」

云われる

「……ん」

手を出せば縛られる手首

「っ…!」

少し痛い
擦り切れた皮が湯でふやけ、柔らかくなっていたからまた剥けた

「…痛いか」

それだけ言うと、右手の縄を解き、反対側の左手をソファーに縛られた

「………」

右手には薬を塗って、ガーゼを貼り付けて、キレイな包帯を巻く
また
変なところで優しい

「……、…礼は言わんへんからな……」
「いいよ」

そう言って風呂場へ向かうGackt
その背中を見た後、左手の縄を解こうとしてみる

「……っ…」

堅い
解けない

「……はぁ…」

諦めてコーヒーを飲む

「………」

暫くボーっとしていると、ある事に気付く

「…そうや」

コーヒーを一気に飲み干し、できるだけ音を立てないようにして
コーヒーカップを割った




「────…」








 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ