「121センチ」 「むー……」 庭に面した明るい縁側。そこで兄に自分の身長を告げられ、スサノオは頬を膨らませた。 高天原こどもの日事情 「ツクヨミさま、僕は?」 「待て、動くな!!……125センチ」 唇を尖らせるスサノオの隣で自分の身長も測れと飛び跳ねるウズメの小さな頭を手で押さえ、ツクヨミは木の柱に貼っている紙の目盛りを読んだ。 「125、じゃあ僕の勝ちだね」 得意気に頷くウズメは最近成長期真っ最中らしい。スサノオはいよいよ膨れてツクヨミの袖を引っ張った。 「あにうえ、ボクも早く大きくなりたい!!」 「そんなことを言われてもな……」 ツクヨミは苦笑した。神の成長というのは個人差が著しい。見た目は生きている年月に比例しないからだ。例えば、オモイカネのようにゆっくりな者もいればアマテラスのようにある日突然という者もいる。 最近父親から天の政治の一切を引き継いだアマテラスの成長は特に著しく、それを追うかのようにツクヨミも青年へと近づいていく。スサノオだけが変わらないのだから、彼が拗ねるのもわからないでもない。 「ああ、ここにいたのかツクヨミ」 膨れる弟にどうしたものかと考えていると、彼の背後の障子がすっと開き、銀髪の少年が顔を出した。オモイカネだ。 「アマテラスがお前を捜しているが……ん?何だ、身長を測っていたのか」 「ああ、ちょっと行ってくるからこの子達を頼む」 そう言い残してアマテラスの元へ急ぐツクヨミを見送ったチビっ子ふたりは、最近また少し背の伸びたオモイカネを見上げた。オモイカネはこの高天原で一番いろんなことを知っているので大きくなる方法も知ってるかもしれない。 「大きくなりたい?」 ウズメとスサノオの問いにオモイカネは一つ助言を与えてくれた。 「ならば、端午の節句をしてもらえばいい」 聞き慣れない単語に幼いふたりは首を傾げたが、オモイカネから説明を聞くとアマテラスの元へと直ぐに駆けて行った。 「……これで柏餅にありつけそうだな」 無邪気に走っていく背中を見送りながらオモイカネが満足そうに笑ったことは、もちろん誰も知らない。 僕がしたかっただけだから (なんて、絶対秘密だ) |