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□鶴の恋
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 むかし、ある国にたくさんの子どもに恵まれたお妃さまがいました。

 ダンナ(イケメンの王様)との仲も良好、というか、むしろ周りがいらっとするほどのバカップルぶり。そして王妃は、子持ちとは思えない美貌を維持している。誰が見ても幸せそうだと思う王妃だった。

 しかしそんな彼女にも、不満はある。
 子どもは多いが、何故か男ばかりで女の子がひとりもいないのだ。

 もともと少女の頃は男嫌いだった彼女。いくら大事なかわいい息子だろうと、五人もいたら少々ムサイ。今はまだ幼くかわいらしくても、いずれ男臭くなってしまう。ムサイのは勘弁。
 ギブミー女の子!!

 そんなわけで、彼女は女の子を授かるまでは諦めきれんとまた子どもを産むが、六人目も七人目も男の子。

 いや、嬉しいしかわいいのだけどやはり女の子を一人だけでも欲しいんです、男の子が嫌なわけではないのですよと彼女は言う。

 もういい加減諦めろよと周りが思い始めたころ、また王妃ご懐妊の知らせが広まった。

 どうせまた男の子だろうと周囲は思っていたし、本人も半ば諦めていたのでその子が生まれたときは皆びっくりした。

 八人目の子は、待望の女の子だった。
 王妃は泣いて喜び、思わず叫んだ。

「この子は掃きだめのなかの麗しい鶴ねっ」

 …この王妃の言葉により、その子の名前は「麗鶴」と書いて〈りつ〉と読むことになった。

 しかしこの時、誰も知るよしもなかった。この子は鶴なんかじゃなく、ただの山猿だということを…



※この話はフィクションです。全国の麗鶴さんとは何の関係もありません

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