DMC
□家族の腕
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彼が帰ってきてから3日。
バージルはダンテの出した食事を摂らない。
摂るのはわずかな水だけ。
連れ帰っている途中、食事を摂らないだろうと薄々勘繰ってはいたが、3日も摂らないとなるとこちらは困る。
たとえ半魔でも、半分は人間なのだ。
ダンテは少々困った顔でバージルの前に立ち、スプーンでスープを掬い、口まで持っていった。
「食わねぇと、倒れるぜ」
「黙れ」
バージルはその手を払い退けると、スプーンは飛び、スープを撒き散らしながら床にカランと音を立て着地する。
撒き散らされたスープの一部がダンテの顔に掛かる。
「…」
ダンテは顔に掛かったスープを無言で拭い、ペロ、と舐めた。
「味は悪くねぇと思うんだけどな…」
バージルはまだ残っているスープの皿を少し見つめ、その足で払い退けようとすると、ダンテはひょい、と皿を取り上げた。
「おいおい、改心の出来を蹴るなよ?」
バージルはダンテをしばし睨みつけた後に、口を開く。
「何故止めた。」
「ん?」
「俺が魔界に行くのを何故止めた!」
ダンテはなんでそんな事を今更聞くんだという顔をし、当たり前の様に返す。
「アンタは兄貴で、俺が弟だから。」
バージルは怒りを現わにし、ガタッと椅子から勢いよく立ち上がると、机を蹴飛ばした。
「なんだその理由は!兄弟がなんだ?人間風情なことを言うな!!」
蹴飛ばされた机を立て、ダンテはバージルの前に立つ。
「アンタは何も、わかってないんだな。」
ダンテはバージルの肩を掴むと、バージルはその手を退けようと殴ったが、ダンテの腕は動かなかった。
そのままダンテは、バージルの背中に腕を回し、自分の方に引き付け、
抱きしめた。
「っ離せ!!」
嫌がったバージルは、ダンテの背中を殴り、足を蹴るが、痛がる様子もなく、動きもしない。
ダンテは更に抱きしめる腕に力を込め、バージルを動けないようにする。
「アンタは、…家族だろう?」
バージルは目を見張る、
その声は、とても泣きそうで、
強くても優しい腕で、
肩が、少し、
震えていた。
抱きしめられたその先に見えたのは、母の写真で、
その母は、
かつて幼かった頃に見た時のように
微笑んでいた。
END
(→アトガキ