薄/桜/鬼

守りたいもの
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「ふぅ・・・、買出しはこれくらいでいいかな・・・」

 千鶴は重たくなった手提げを一度地面に下ろし、休憩する。


 今日はいい天気で、買出しに出るにもいい日だった。
屯所で買出しに行ってくると告げると心配だから誰かを付いて行かせようと近藤さんが言ってくれたが、買う物が買う物だったりしたので、(男性が居ると買いにくい・・)
すぐに帰るのでご心配なさらずにと言い、町に出て着たのだ。

だが、思ったより一度に少し買いすぎてしまったようで、この荷物は少し重い。


「やっぱり、誰かについて来て貰ったほうがよかったかな・・・」

そう告げても、今は誰も手伝ってくれない。
そう一息ついて、もう一度荷物を両の手で持ち上げ、屯所に帰りだした。

 屯所が近くなってくると、段々足が速くなる。すると、足元にあった石に気付かなかった千鶴はつまずいた。


「ふぇっ!、きゃ!」

気付いたときには遅く、荷物も重かったため、それは見事に転んだ。
荷物の中身は出なかったものの、土がまぶってしまっていた。
千鶴の着物や袴も土だらけで、こんなに見事に転んだのはいつ振りだろうか。


「うぅ、・・・あぁ、着物が・・・」

急いで立ち上がり、土を払っていると、右膝が痛んだ。
少し擦りむいてしまっている様だ。
袴の上から擦りむいた為に、あまり酷くないように見えたし、自分は鬼なので早く治ってしまうので大丈夫だと思った。

「着物を早く洗わなくちゃ・・・」

手提げの土も払い、泥だらけになった千鶴は今度は急がず、ゆっくりと屯所に帰った。





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