薄/桜/鬼
□拍手集
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【薄桜鬼 左之ちづ/十五夜ネタ】
今日は9月25日。
夜空はとても晴れて、月がキラキラと輝いている。
今、私が作っているのはお月見で食べるお団子。
昨日、突然近藤さんが「ぉ、そういえば明日は十五夜だなぁ。」
と呟いたのがきっかけ。
皆、十五夜なんて覚えてもいなかったため、お酒や夜更かしが出来る絶好の機会を思い出せば、それを実行しようとする新撰組幹部約三名。
二、三度土方さんに怒鳴られていたけれど、近藤さんが手を打ち、お月見をすることになりました。
その準備を私はしています。
「えっと・・・・杯は・・・あった。」
一人厨房で準備をしていると、原田さんが厨房に入って来た。
「よぉ。準備どうだ?、なにか、手伝えることでもあるか?」
お団子もお酒も準備でき、お盆に乗せている。後は持って行って、皆で楽しく騒ぐだけである。
「ぁ、はい。芒(ススキ)も持って行きましたし・・・・・それじゃぁ、お酒を運ぶの、手伝って貰えますか?」
そう尋ねると快く原田さんは持って行ってくれた。
中庭に一番近い部屋の、縁側に行くと、皆座っていて、他愛無い話をしながら月を見ていた。
「おい左之!・・・・先に酒を味見でもしてねぇだろうな?」
「ばっか、してねぇよ!」
酒を待ち待ちとしていた永倉さんが原田さんをからかう。
「まぁ、今夜の酒が来たんだ。みんなで楽しく飲もうぜ。」
そういうと、みんな、杯にお酒を入れて、またそれぞれで楽しく賑わった。
「おい、新八!寝るな!」
月の位置が真上にまで来るほどの時間。
そろそろ、みんな解散をしようとしていたが、自分で部屋に戻れなさそうな人が一名。
「馬鹿だよなぁしんぱっつぁん。・・・・あれだけ飲みまくるなよって土方さんに言われてんのに。・・・・・・・ふぁ〜あ・・・俺も眠いから部屋戻るわ。」
一人酔いつぶれて、伸びている永倉さんを必死に起こそうとする原田さん。
「うん。おやすみなさい、平助君。」
「おやすみ、千鶴。」
平助君が部屋に行った後、残ったのは私と原田さんと永倉さん。
「永倉さん、大丈夫ですかね?」
「いや、完璧寝てやがる。今なら顔を足で潰しても起きねぇな。
・・・・・・仕方ない、部屋まで運ぶか。」
よいしょ、と原田さんは永倉さんを抱えると、部屋に向かって歩き出した。
「ぁ、永倉さんのお布団、敷きますね。」
「あぁ、頼むよ。」
部屋に着いて、永倉さんを寝かし終わった。
私は部屋に戻ろうとしたが、
「なぁ、ちょっとだけ、いいか?」
「えぇ。どうしました?」
「いや、もうちょっと酒を飲もうかと思ってよ、酌してくれねぇか。・・・こんな時間だし、眠いならいいんだけどよ。」
「いえ、大丈夫ですよ。お供します。」
先程の縁側へ行くと、少し残っていた杯のお酒を注ぐと、少し飲んでは離し、飲んでは離しをしていた。
その隣に付いていた私はもう随分と上に昇ってしまった月を見上げると、少し雲がかかっていて、少し、言葉を呟いた。
「月、綺麗ですね・・・・」
「・・・・・そうだな。」
そしてしばしの沈黙。
蟋蟀(コウロギ)が凛々と鳴く音だけが響く。
「・・・・・なぁ千鶴。」
「・・・・・・」
「・・・・千鶴?」
「・・・・・・・」
「?・・・・・どうし、」
そこまで言いかけると、千鶴が左之助にもたれ掛かる。
突然だったので酒を零しそうになったが、上手く置き、千鶴の肩に片腕で手を回す。
千鶴の顔を覗き込むと――時間が時間。気持ち良さそうに眠っていた。
「・・・・・・寝てるな。」
その寝顔は幼さは完全に取れてはいないが、でもそれなりの大人っぽさが月明かりで照らされ、いつもと違う様な表情に見える。
一瞬、息を飲む。
「・・・・・何考えてるんだよ俺。」
俺らしくない。
そう思って頭をかくと、横抱きにして、立ち上がる。
「姫も寝ちまったし、戻るか。」
その日の朝、目が覚めた千鶴が左之助と同じ布団で寝ていたため、言葉にならない叫びを上げ、後から土方に訳を必死し話していたのは別。
(完)
長すぎだろうこれ。