薄/桜/鬼

足りない感覚
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シン、と静まりかえる京の夜、満月の日だった。その満月は異様な色で、みかんを潰したような色をしていた。



大分、夜の深いので私はおとなしく布団に入って寝静まっていた。

『・・・・。』




なかなか寝付けない。
今日は結構皆の手伝いなど、動いたつもりだったが、なんだか目が冴えて寝れないのだ。

『うーん・・。』




少し暑かったので、縁側に出て夜空を見上げる。

『・・・・変な色。』

いかにも、月が、いつもの色鮮やかな黄色ではなく、少し濁っているのだ。

『・・・嫌な予感がする。』


そんな気がしたので、早く寝ようと部屋に戻ろうとした時 ―






「うっ・・・、ぐ・・・ぁ・・」


苦しむ様な、何か異様な声が遠くで聞こえた。

『な、何・・・・?』






声がする方をたどって行くと、沖田さんの部屋から声がする事に気づいた。

『!!沖田さんっ!!』

襖を勢い良く開けると、沖田さんが胸を苦しそうに羅刹の発作に耐えていた。




「っ・・・千鶴ちゃん、大丈夫。すぐ、良くな、る・・・・」

『大丈夫じゃないです!』

そう私は焦って言うと部屋から出る前に持って来た小太刀を抜き、自分の首筋に滑らせる。
すると簡単に傷ができ、赤い血が零れる。



『沖田さん、血を飲んで、下さい。』

傷が出来た方の肩を近づけると、沖田さんは目を見開き、傷に貪るように食いついた。



『んっ・・・』




いつもより、強めに舐められるので、私は少し身をよじった。



「・・・っ・・・、ごめん。千鶴ちゃん。」



大分落ち着いたのか、沖田さんは顔を上げて私に謝った。



『いいんですよ。私が出来る事は少ないですし。』

私は出来るかぎり微笑むと沖田さんの顔が歪む。







「ううん、違うんだ。・・・・・ごめん。」

何が違うのか私は分からなかったので、沖田さんの顔を見上げるを急に抱きしめられた。






『どっ・・・どうしたんですか、沖田さ、んんっ!・・』

いきなり口付け。





苦しかったので、顔を避けようとするが、顔を手で固定されて動かせない。
必死に沖田さんの胸を押し返すが、勝てる訳がない。




『ん、・・・っふ・・・・・・ふはっ』

やっと口が開放されたので肩を上下に呼吸をしていると、沖田さんが私を押し倒す。



『嫌っ・・・・沖田、さん。』







怖くて涙が出た。
いつもと違う反応に怖かった。
こんな事をされた事はない。

私は堪えられなくなった涙をポロポロ流していると沖田さんは目を見開いて、私からバッと離れた。




離れた沖田さんは息が上がっていて、そのまま私を見た。







「ごめんっ・・・・。」

後悔の顔をしていた。
自分でもそんなつもりは無かったのだと思う。




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