ブック

□雨
1ページ/1ページ


――…サァァァ……

雲が空一杯に広がり、次第に雨まで降ってきた
雨のお陰で私達は足止めをくらった上に、三蔵は部屋から出てこない。(あ、いつもかも…)八戒もどこか辛そうな顔してるし。

「あーぁ…」

私はため息混じりにそう言って憎たらしい雨を見た

――…サァァァ……

雨は一向に止む気配がなく、この宿でもう一泊することなんて、目に見えていた

「どうかしたのですか?元気がないみたいですけど」

不意に八戒がそう私に声をかけてきた

「八戒こそ…どこか辛そうな顔してるよ」

私がそう言うと、

「あ、バレました?」

と、無理に笑ってそう言った

「無理に笑わないの!」

私はそう言うと、八戒の顔を両手で挟んで、ぐるぐる回してみた

「…ぷっ!アハハ!!」

思いの外面白くて、つい、ふきだしてしまった

「そんなに面白かったですか…?」

困ったように笑ってそう言った八戒に私は

「…うん、バリウケる!」

と笑いながら言った

「そんな悟浄みたいなこと言わないで下さい…そうですか……」

八戒は本気で迷惑というか困った感じでそう言って、考えこんでしまった

「…?あのー、八戒さん?」

私がそう言って八戒の顔を覗き込むと、

――パチッ…グルグル……

「なっ!?うぅ〜〜!!」

八戒はさっきの私のように両手で私の顔を挟んで、ぐるぐる回した
私は驚いた。と、同時に八戒の顔が少し真剣だったから、どうすればいいのか困った

「…ぷっ!アハハ!!」

いきなり八戒がふきだして、私は更に困った

「そんなに面白かったの…?」

そう私が言うと、八戒は笑いながら

「はい、バリウケますね」

と言った

「あっ!八戒真似したな!!」

私がそう言うと

「あなただって悟浄の真似をしたじゃないですか」

と八戒は言った

「まぁ、そりゃあそうだけどさ…」

私がそう言うと八戒は

「そんな拗ねないで下さい
今からコーヒーいれますから」

と、小さい子をあやすように言った

「…飲む……」

私は小さく、でも八戒に聞こえるようにそう言った

「わかりました」

八戒はニッコリ笑ってそう言った


――…それからの八戒はどこか辛そうな顔なんてしてなくて、いつも通りって感じで、少しは役にたてたかな?って自画自賛して、でも少しだけあなたに近付けたのかな?なんて思ったけど、それはまだまだみたい…――

(気が付けば雨は止んでいた)



   ―end―
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ