†カミツレの花壇†


□《夢の中》
1ページ/2ページ


当麻事件も解決し、やっとの事で公休が取れた郁は日に日に機嫌が悪くなっていると言う上官の見舞いに未だに行っていない。
サッサと行きなさいよね。と柴崎は郁に発破をかけるが、当の本人が'教官に明日会いに行く。'と宣言し、布団の中に潜ってしまった…。
どれほど緊張していても今までの激務が祟ったのか、睡魔は容赦なく襲って来て郁はものの数分で眠ってしまった。
そんな郁を見て柴崎はクスッと笑う…。
何に怯えているのか、郁が心配する展開になるはずもないのに本人は答えを保留にしたがっている。
郁曰わく、'170p戦闘職種大女'を特別視してくれる男性は居ないらしい。
コレほど中身が乙女な女性を見極められない男などに、堂上が郁をやるつもりはない。
柴崎はそう分かっていて、敢えて郁にその事実を言わなのは…柴崎が面白がっているからだろう。
だが、この二人はじれったい程周り道をしてくれた。
サッサとくっ付いて、収まるところに収まればいいものを…等と玄田が言うくらいだ。
柴崎もサッサと寝てしまおうとベッドに潜った時だった…。


「…きょ…かん。」


ポツリと小さな声で郁が堂上を呼んだのだ。
「一体何の夢を見てるのかしらねぇ〜。」
明日会えるのにね。等と笑いながら郁の寝顔を覗き込んで、幸せそうな笑顔を見る。
「あんたが望んだ未来はきっと来るわよ…。この柴崎様が言うくらいだから間違いないわよ…。」
クスクス笑って柴崎は部屋の電気を消した…。



郁はあまり着ないような、可愛い系のワンピースを着て駅へ向かって走っていた。
時間に遅れそうで急いでいる…。
大好きな堂上とカモミールティーを飲みに行く約束…。
お茶を飲んだら映画に行って、夕飯も一緒にとることになっている。
堂上の前に辿り着けば'急がなくても大事だ'と言ってくれたが、郁にとっては走ってしまうほど楽しみで仕方なかったのだ。
「この前行ったお店で良いですよね?」
郁の問いかけに堂上も優しい笑顔で'あぁ。'と答えてくれる。
人通りが激しいからと、堂上が手を引いて郁をエスコートしてくれた。
「教官!!」
あまりの恥ずかしさに郁が真っ赤になる。
'この位良いだろう?'と言ってくる堂上は、物凄く甘い笑顔を郁にくれた。
まるで恋人に見せるような甘い表情だ。
「好きです…堂上教官…。」


そう口をついて出てきた言葉は、郁を一気に現実へと連れ戻した。


「っ!!…教官…っ。」
人を好きになるのが、初めてって訳ではない…。
だがこれ程までに誰かを愛したのは、郁は初めてだった…。

切なくなる程の恋心…。

相手を想うだけで不思議と強くなれる心…。

痛いくらいの相手への想い…。

全て堂上を好きになって知った感情だった。
ふられても良い…。
相手が幸せならば自分の心は痛いけど、郁じゃない相手を選んでも良いと思える男性だ…。
一生に一度かも知れない…。
だから明日決着を付けに行くのだ…。
 
 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ