復活

□赤い虹による大空専用レシピ
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誰の目にも止まらない様な森の中に、それはある。

「おや、珍しいね、2日連続でくるなんて」
「こんにちは、風さん。時間があったので、今日も来ちゃいました」
「ふふっ。2日連続で君に会えるなんて嬉しいよ、綱吉くん」

扉を開ければ、カランカランと軽い鈴の音出迎えてくれるそこは、落ち着いた雰囲気の珈琲や紅茶、スイーツ等ケーキ〜パン、ランチまで出してくれるありふれた喫茶店である。
ほとんど人気はないが、つぶれない程度には繁盛していて、常連客も数えれるほどだがいるし、綱吉本人もその人たちとも仲がいい。
なによりこの店の唯一の店員にして店長の風さんの事が綱吉は大好きなのだ。

「さぁ、好きな所に座りなよ。今日はみんなが居ないから、綱吉の貸し切り状態だよ」

にっこりと手に持っていた新聞を机に置いて微笑みながら言えば、綱吉は迷わず店員用に作られカウンター内の席に座っている風の前に腰を下ろした。
「何にする?」ときけば、今度は綱吉がにっこりと笑い、「何時もので」と答えたので、風は「了解」と一言いうと席を立ってオープンキッチンへ入り、この店には不釣り合いな中華鍋で何やら色々と炒め始めた。
その後ろ姿をにこにこと眺めている綱吉も常連客の1人である。
基本的な常連客はみんな個性的で、1人はいつも真っ黒なスーツを身をまとって、怪しげな仕事をしているし、もう1人は軍師のような出で立ちに金髪で、スーツ男と知り合いでおんなじ仕事をしているらしい。
その他にも怪しげな魔術師やマッドサイエンティストにパンクライダー、たまにだが妊婦も来たりする。
みんな人少ない、お手頃で料理がうまいというので、この店に来ることもあるが、一番楽しみは風の親戚である綱吉だったりする。
綱吉を一目でも見た客は、常連客になるのがこの店の暗黙の了解。というはおかしいが、一目見ればもう一目見たいという気持ちにかられ、必然的にそうなるのだ。

「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」

皿に盛られた料理はチャーハンで、綱吉はそれをうけとり、美味しそうな匂いに鼻をひくひくとさせながら、レンゲを手にとりチャーハンをすくって口にはこんだ。
ポロポロのご飯にはしっかり味がついていて、更にそれのを際立たせるように隠し味が入っているというわふわのたまご、小さく正方形に切られているのに食感がしっかりしているチャーシュー、そして葱の味がいい感じに絡み合っていて、その極上の味に綱吉は頬をゆるめた。

「いつもながら美味しいです。風さん」
「ありがとう、綱吉くん」

本当に美味しそうに食べてくれる綱吉を嬉しそうに見ながら、風はカウンターの方に身を出して綱吉が食べる終わるのを眺めた。
数分もすれば、綺麗に盛られていたチャーハンは、米一粒も残らずに綱吉の口の中に消えていった。

「ごちそうさまです!」
「お粗末様でした」
「んー!こんなに美味しいのに、なんでメニューに出さないんですか?」

目の前に置かれたメニュー表をみながら綱吉が疑問を口にすれば、風はいつもの笑顔で、

「私のチャーハンは綱吉くん専用だからね」

と軽く答えた。
だが、綱吉は答えになってないのでは?と頭に?をだしたので、風は苦笑してそのうちわかるよ。と残った皿を取って、流し台に置いた。

「あ、新作の料理が出来たんだけど、食べるかい?」
「あ、はい!いただきます!!」

綱吉がいまだに悩んでいると誤魔化すように風が声をかけた。
するとさっき悩んでいたのが嘘の様に満面の笑顔が返事として帰ってきた。





(まだ君には早い)


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