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□恋人たちの休日
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−恋人たちの休日−
Side-T
一ヶ月に一度あるかないかの二人揃っての休日。
心地よい眠りから覚めて、ふと視線を感じ見上げると、そこには柔らかい微笑を浮かべた愛しい彼の存在。
先に起きるのは、決まっていつも彼。
気づけば、昨夜から途絶えることのなかった優しい温もりが、今もなお私の体を支配している。
剛に抱かれながら過ごす、ゆったりとしたこの時間。
ベッドの中からなかなか抜け出せない理由の一つ。
満足げな表情を浮かべながら、私の髪を撫でたりいじったりできるのは、先に目覚めた彼の特権。
まんまるくて黒目が大きい目と、長い睫毛。
男らしい厚い胸板と、それとはうって変わって女の子らしい、可愛いアヒル口。
剛のすべてが、私の欲情を掻き乱す。
何だかそれが妙に息苦しくて、それでもずっと剛を近くに感じていたいのも事実で。
理性と本能の戦いが私を翻弄させる。
そんな自分自身との戦いにピリオドが打たれそうな時、剛は決まってこう言うの。
「おはよ………」って、棘が全くない、丸い声で囁くその唇。
「よく眠れましたか?お嬢様」って、今にも避難注意報がでそうなその雪崩顔。
「アカン……お前の、その寝起きの顔、色っぽいわ」って、さらに強く抱きしめる、その力強くて、たくましくて、それでいて優しい腕。
その全てがさっきの戦いで勝つはずだった理性を脆くも崩し、私の本能を呼び覚ます。
「剛、どこにもいかないでね」
「もちろん」
「剛は、私だけ感じていればいい」
「そのつもりやけど?」
「剛は、誰にも渡さない」
「俺を鎖で繋いでても、構へんよ」
「ふふ、剛らしい」
広く、温かい胸に身を寄せ、剛の鼓動を感じる。
若干、鼓動が激しいと感じるのは気のせいではないと思う。
そうさせているのは、紛れもなく私自身。
いつも穏やかで、温厚な剛を乱すことのできるのは私だけ。
その優越感が、さらに私の本能をかきたてる。
「なんや……今日はいつものお前と違うやん」
「剛のせいだよ」
「俺も、お前のせいでどうにかなりそうやわ」
「好き……」
「知ってる」
私が剛に溺れる日。
剛が、私の心をいつにも増して狂わせる日。
剛が、私の体をいつにも増して熱く燃えさせる日。
そして同様に。
剛が私に溺れる日。
私が、剛の心をいつにも増して狂わせる日。
私が、剛の体をいつにも増して熱く燃えさせる日。
それは一ヶ月に一度あるかないかの二人揃っての休日。
「ずっと一緒にいようね」
「安心し。俺はお前にベタ惚れやから」
−Fin−