†葵染 析SIDE†

□keep one's
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「おめでとうございます」


「へへーサーンキュー」



暗くした部屋の中で15本のロウソクが揺れる。



きらびやかな色とりどりのフルーツの上にある光は、二人の顔を優しく照らす。


「ちゃんと名前入れてくれたんだな、ケーキ。“岳人へ”だってーっ。な、これ買う時どんな感じだった?どんな風に注文したのー?」



からかうように岳人が日吉の顔を覗く。


誕生日ケーキは、チョコのに名前が入ってるやつ!と言い、ねだった。


結果、日吉はちゃんと約束を守り、名前入りの豪華なフルーツタルトを買って来た。



「…うるさいですよっ‥そうやって嫌がらせするならケーキもプレゼントもあげませんからねっ」



日吉が拗ねたように反撃をする。



「あ、ごめんーっやだやだ、喰う!な?ありがとうな?もう言わねーからよ〜」




焦りながら弁解すり岳人を見つめ、ゆっくりと唇を重ねた…。




「‥ン‥」





唇が重なると、自然に瞼が落ちた。



啄みながら二人だけの甘い世界に酔い痴れる‥‥





「……日吉……」





目を幸せそうにとろけさせ、岳人は日吉を見つめる。




「‥ん‥?」




微かに笑う顔に、岳人は鼓動を高鳴らせ




「も、一回……」





服の裾を引き、ねだりながら睫毛を伏せた。





「‥はい‥」




その仕草に胸を詰まらせ、言われるまま、希望の甘い時間を与える。






何度重ねても、
何度求めても、
何故こんなに飽きもせずに‥‥

逆にどんどん愛しさが増していく…



最後の14歳でするキス。





「…後、一分…」



日吉が時計と交互に見つめる。



「後少しで又、貴方は俺より先に大人になってしまう…」



「日吉…」




「それでも、俺だけのものでいて下さい…」



日吉は岳人の手を取ると、手の甲に唇を落とす。



「…わ…!」





初めてされた行為に岳人は驚いた。





「……誕生日、おめでとう………」









    「岳人」







顔を上げ微笑む日吉に、岳人は見とれた…






「……?‥む、向日さん…」




反応のない岳人に、日吉が怪訝な顔をする。




「えっ…あ‥‥ありがとう」




ハッとした岳人は、慌てて言葉を発した。




「…えと…何か俺、嫌な事しましたか…?」



岳人の態度が心配になり、日吉は眉を寄せる。




「いやっ全然!…たださ…その…初めてだなーって…」



「?」



日吉は訳が分からず首を傾げる。





「だから…今の。…手に、チュー‥」




「あ…」



「なんかさ、何か……王子様みてー」





「…王子…様…?」



「そ。よくお姫様とかにやっるイメージあっからよー。お前も王子顔だしなっ」




王子顔…?



どんな顔だろう…と思いながらも日吉は岳人の言葉に反応する。



「…じゃあ…貴方が姫、ですね」
 
 
 
 
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