‡田村 尋SIDE‡
□恋の病
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†恋の病†
あの人が飛び跳ねると、空高く佇む太陽と重なって、彼の眩しさが更に輝きを増す。
俺にはあんなに高く飛ぶ事なんてできないから、そんな彼に憧憬の念を抱いてしまうわけだが、地に帰り着いた彼は、迷わず俺の元に駆け寄ってくるので、『お帰りなさい』と心で囁いて、俺は彼を壊さないようにそっと抱きしめる。
彼は年上とは思えない容姿でとても可愛らしい。
けれど思わずそれを口にすると、あの可憐な顔を膨れっ面にさせて怒り出す。
余り感情を表に出す事が苦手な俺の正直な言葉なんだから、少しは信じて欲しいんだけれど…。
それが仇となってしまったのか、俺が素直になると、彼は何故か警戒する。
貴方は知らないんだろう。
俺の元に駆け寄るたびに、貴方を抱きしめる理由なんて。
地を離れて、あの眩い太陽に向かう姿に俺が憧れると共に、その太陽にすら嫉妬してしまう醜い俺の感情を、貴方は理解出来ないだろうね。
俺は『お帰りなさい』の意味を込めながら貴方を抱きしめて、あの忌々しい太陽に見せ付けてるんだ。
こんな醜い自分を晒してしまったら、今俺の腕の中に居る貴方が離れてしまいそうで、俺はまた素直な感情を一つ、押し殺す。