‡田村 尋SIDE‡

□ホームワーク
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†ホームワーク†


「あっぢィ…」


灼熱とも言える午後の日差しが窓から差し込む。

否応なしに室内は熱気に包まれ、岳人はテーブルに突っ伏した。

外では蝉が僅かな生命を横臥するように、耳障りな鳴き声をざわめかせている。


「アンタ…一体何しに来たんですか」


岳人と向かい合うようにして、黙々と夏休みの課題に取り組む日吉が、呆れたとばかりに溜息を吐いた。


「だってさぁ…」


暑さで、今にも溶けてしまうと言わんばかりの岳人。


「アンタが俺の家で課題やりたいって言ってきたんですよ?」

「う〜…そうなんだけどさぁ…」


まるで破気のない返答をする岳人に、日吉は肩をすくめた。




夏休みが始まって一週間と少し。
久々に部活のない休日。
こんなチャンスは滅多にないと岳人は恋人である日吉の家に押し掛けた。



……夏休みの課題を一緒にしようと理由付けて。



当の日吉にしてみれば学年の違う岳人と、何故一緒に課題をしなければならないのかと、正直困惑してしまう。

しかし、一般論がまるで通用しない岳人の前では日吉のこの最もな意見は意味を為さない。




かくして日吉は望まずして岳人を迎え入れることになった。


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