おはなし
□グレープフルーツジュース
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あまくて
…にがい。
……だけどあまい
グレープフルーツジュース
ある日、冷蔵庫を開けると…
「……なんだコリャ」
ザックスは冷蔵庫内のあるものに釘付けになった。
「グレープフルーツジュース。」屈み込んで冷蔵庫内の一点を見つめてるザックスの背中にふわりと覆い被さりながらクラウドは答える。
「しかし…、なんでまたグレープフルーツジュースなんてあるんだ?」
ザックスの知る限りクラウドは甘党だったハズ…
うん、確かにそうだ。そしてすっぱいものが苦手なはずだ。
この前、甘いから大丈夫だろうといってレモネードを渡したとき、「すっぱいぃ〜」とひと口飲んだだけで突き返されたのをザックスはちゃんと覚えている。
レモネードがダメならこのグレープフルーツジュースは更に無理なんじゃ…とザックスはやや…困惑する
よくある申し訳程度に果汁(10%とか20%とかの)の存在をアピールした甘いジュースかと思い、ラベルを見てみたが
表示は果汁100%…
『……苦さMAXやんけ!!』
ザックスが口に出さずに叫んでいると、クラウドがちょっと頬のあたりを桜色に染めて
「すっぱいのはダメだけど、甘酸っぱいのは克服するんだ。」とザックスの耳に語りかけた。
なんでまたそんな事になったのか…ザックスにはさっぱりだった。
ザックスの知る限りクラウドはあまり好き嫌いはしない。
母子家庭で育ったクラウドは、衣食住に関して文句を唱える事などほぼない
ザックスが自分の部屋へ一緒に暮らそうと誘った時、クラウドの為に質の良い家具を揃えた。それを見たクラウドはたいそうザックスに感謝の念を述べていた。
ザックスは些細な事にも感謝を忘れないあの時のクラウドの微笑みを見て改めて愛おしく感じたのを覚えている。
そんなクラウドが唯一拒否していたのが『酸っぱいもの』だった。
モヤモヤと考えてるとぬっと白い腕がザックスの両肩から現れた。
冷蔵庫の中のグレープフルーツジュースを掴もうとしている
しゃがんだ背中に重さを感じ、クラウドがのっかっているのを思い出してザックスはゆっくり立ち上がる。
「わわっ」
クラウドが慌ててザックスにすがりついた
「どうしてまた急に克服しようってなったの??」
ザックスは優しく尋ねる
クラウドはザックスにおんぶされている状態でザックスには表情はわからない。
クラウドはザックスの首に巻きつけていた腕にぎゅっと力を入れた。
「……ザックス、キスして。」
クラウドが何かしらの返事かリアクションをとるだろうと静かに待っていたザックスはびっくりしてクラウドを背中から落としそうになった
「クラウド?」
「…ダメ??」
クラウドから求められた事など初めてで驚きながらも
「いいよ。」
クラウドを背中からおろして冷蔵庫のあるカウンターキッチンの上に座らせた
自分のその掌でクラウドの頬を撫でて顎を寄せる
もう片方は腰に這わせて顔を近づけてゆく…
互いの唇がそっと触れ合う
ザックスはクラウドのキスのおねだりはこのグレープフルーツジュース(今も抱きしめているクラウドの腕の中にある)が関わっているのかと様子をみるため、軽くキスをしてクラウドから離れた。
クラウドはグレープフルーツジュースの瓶を両手で持ちザックスを見つめていた。
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