□霧雨
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霧雨



彼は強い
(知っています)

恐ろしい
(知っています)

危険だ
(知っています)


それは見れば解る事、
近くに居れば居るほど
身に染みる。


ただ、言いたいのは
世の事は「表」だけが全てじゃあない。


お分かりでしょう?
「笑っているから」幸せとは限らない。

それを誰よりも深く強く「理解」しているのが私たちであるのだから。
「攘夷浪士」、
一くくりにしないで頂きたい。


私たちは「鬼兵隊」。
高杉晋助に率いられ。

高杉晋助を誰よりも
知っている私たち。
逆もまた然り。


太く、深く
だからこそ潔く、
絶ち斬る事すら出来るのです。








「お体が冷えますよ。」

窓から半身を乗り出して、霧雨に打たれる貴方は、
振り向きも答えもしなかった。


何を、想っているのでしょう。振り向けない理由が有るのでしょう。


貴方のたった一つの美しい瞳は、何を映しているのでしょう。



「暖かいものでも用意しましょう。暫しお待ちください。」


あぁ、
と、小さな、小さな声が私には聞こえました。








微かにその声は、
震えていました。
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