□べにざくら
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「喧嘩したの?」


「……別に。」



喧嘩したんだ。


晋ちゃんの一番近くに居るアイツが居ない。


「乗せてったげる、帰り。」


「………頼む。」



いつも、アイツのバイクの後ろ側。そこが晋ちゃんの席。


こういう時だけ、
でも良い。



「悪ィ。」


そう言って後を着いてくる姿が微笑ましい。



きっと2人は、明日あたり仲直りするだろう。


それでも良い。
今この時を、頼ってくれるなら。





バイク置き場に行ったら、アイツが待っていた。


気まずそうに、待っていた。


晋ちゃんが、そっちに歩いていった。2人で何か話して、こっちを向いた。


「帰り、大丈夫になった。すまねェ、似蔵。」



いいよ、と手を振って、
先に学校を出た。



たまに、心の奥深く、
化け物になって、
晋ちゃんを喰い潰すほど、
暗い渦が生まれる。



けれどそれはしまっておける。



それは遡ること春の日、
夕暮れに紅く染まった、
桜の木の下で、



一人だった俺に声をかけてくれた、あなたに一目で惹かれたその日から、



きっと、ずっと隠しておく想い。







べにざくら

:終
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