NOTE
□この世で一番美しいのは
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私は奴の、騎士と呼ばれる存在だ。
何に代えても奴を守り、永遠に奴を守り続ける使命がある。
だから今も奴の部屋で監視しているわけだが。
「……」
奴は無言で本を閉じた。
最近、何をしても手につかないらしい。何か、悩んでることがあるようだ。
まあ私は、その"悩んでること"の大体は把握している。
枢木スザク。
そいつのことを想って今日も奴、ルルーシュはため息を吐く。
(…全く、どこの恋する乙女なんだお前は)
私のため息も、尽きない。
***
この世で一番美しいのは
***
私は後ろから、座っていたルルーシュの耳朶に息と声を吹き掛けてやった。
「る、る、う、しゅ」
「ほああ!?」
なるほどまた悩んでいたようだ。
ルルーシュは馬鹿みたいな声を上げて私を恨めしそうに睨んだ。
この表情はたまらなく好きだ。怒った顔はもっと好きだな。だが泣き顔が一番美しい。
私はルルーシュの睨みを鼻息であしらった。
「馬鹿みたいに呆けているじゃないか。なんだ?お前は処女か?」
「……それが、」
「主人に対する口かと?残念ながら私はお前の部下じゃない」
ルルーシュは言葉を詰まらせる。私を凝視する。
ああ、美しい顔だな。生きる機能を奪ってずっと取っておきたい。
私はそう思いながら、更にルルーシュを言い負かすために口を開いた。
「お前の尊大なるお兄様、シュナイゼル第2皇子殿下の命令だ。友達のように、双子の姉弟のように暮らせとな」
お兄様、と、皇子殿下、を強調する。
ルルーシュは物凄くイライラしているようだ。…その顔は、あまり好みではないな。
「で、なんだ。枢木か」
「…うるさい」
「見ていたぞ。キスを、」
「うるさい!」
ルルーシュが泣きそうな声で叫んだ。
久しぶりに泣き顔が見られるかと思えば、ルルーシュは涙を必死にこらえているようだった。
そう、彼の泣き顔は久しく見ていない。
きっと枢木と出会った頃からだろう、彼が泣かなくなったのは。
(…なんだ、勿体無い)
ルルーシュは立ち上がって、そのまま歩いていってしまった。
「なんだ、何も言わないのか?」
ルルーシュはベッドにうつ伏せに倒れ込んだ。
奴はいつもベッドに倒れて泣く。
それはもう昔からだった。
そして奴は外ではいつもイライラしたような不機嫌そうな顔をする。
だから、泣き顔も怒った顔も、私しか見ることができなかったのだ。
「……なあ、ルルーシュ」
奴の頭に手を乗せて、髪をくしゃりと握る。
「言ってみろ、何があった?」
私はお前の味方だよ、と小さく言う。
するとルルーシュはうつ伏せに倒れたまま、声を絞り出した。
「……キス、を、頼んだ」
「ああ」
「スザクは、して、くれた」
「いいじゃないか」
「で、も……っ」
ぐず、と涙の音がする。
私以外がこの皇子様を泣かせたと思うと、なぜか枢木を無性に殴りたくなった。
「友達だ、て、言っ、」
「……は?」
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