□想いの向かうところ
1ページ/4ページ

貴方を手に入れたからこそ

不安が増えるのだ


《想いの向かうところ》


『ー…好きだよ』

そういって、頬を染めて笑顔をくれたあの方の言葉が
今も反復したように頭を巡る。


十代目が、俺を好きだと告白して下さったのが十日程前。
告白されて、ポカンと間抜けな顔を晒す俺に苦笑されていた気がする。
だって信じられなかったんだ。
十代目が俺を恋愛対象として好きだなんて。
十代目と俺が同じ想いだったなんて。
普通は思わないだろう?

そんな呆然とした驚きも
信じられなくてふわふわしたままの現実も
全て包み込んでしまうくらい嬉しかったんだ。
十代目が笹川でも、他の誰でもない、俺を選んで下さったことが。

十代目の告白を呆然もしたまま頷いた俺に、十代目は嬉しそうに微笑んでくれた。
お母様似の可愛らしい顔立ちが綻ぶ笑顔は俺をいつも幸せに包んでくれる。
俺の大好きな笑顔。

そんなあの方が下さる言葉は魔法のような呪文のようなものだった。

好きだよ
大好き、ごくでらくん

そういって告白を受け入れた俺を、優しく抱きしめて下さった。


ー…それが、十日前の事。


あの日から、俺は十代目と…所謂、『お付き合い』させて頂く事になった。
周りには言わずに…ということでだったけど、十代目はリボーンさんにはどうせバレてると苦笑されていた。
男同士だから、隠れるようにしての付き合いであるけれど、それでも俺には充分だった。

……ただ一つ、気になる事を除けば。


十代目とそういう関係になって十日……それはふとした時に気が付いた。
…いや、俺が十代目を見ていたからこそ気が付いたのかもしれない。

初めて気が付いたのは、山本と会話していた時だった。

その日、放課後職員室へ行っていた十代目を教室でお待ちしていると、野球馬鹿が話し掛けてきた。
いつものように勝手に話し始めた野球馬鹿に、俺もいつもながらに素っ気ない態度だったと思う。
まあ、俺は大概誰に対してもそんな態度だし、かと言って野球馬鹿が俺のそんな態度なんか気にすることなく話してくるけれど。
言うなれば、ある意味これは俺達にとってはいつもの光景だったと言えるかもしれない。
ーそして、そこへ十代目が戻って来られた。
教室に入るなり、俺達に気が付いて、いつものように笑顔で会話に交ざる十代目。
ここまでは何もおかしなところはないのだ。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ