□暴発エンジニアリング
1ページ/7ページ

姿、形が本質なのではない

『貴方』であることが
最大の理由になるのだ


《暴発エンジニアリング》


ーー耳に聞こえるのは、押し殺したように微かに聞こえる自分の呼吸。
壁に身を寄せ、角からそっと向こうの様子をじっと伺う。

…よし、誰の気配も感じられない。
今なら行ける。

猫のように俊敏な動きで、それでいて気配を悟られないように極力静かな動きで、強大な建物に巡らせてある広い廊下を角から角へ、目的地に向け身を潜めながら移動していく。

まるで潜入作戦か何かのようなこの行動。

だが、決して敵地潜入とか機密作戦とか…そういった重苦しい理由故ではないのだ。
……いや、こんな行動をしている張本人である獄寺にとっては、とても重い問題ではあるのだがー……


…そもそも、ここは敵地などではなく、れっきとしたボンゴレアジトなのだ。
今やボンゴレ十代目の右腕として名を馳せる彼が、自分にとって安全だといえる自分達のアジトで、一体何をここまで警戒しているというのか。

獄寺がこんな奇妙な行動をとる理由は、ほんの数分前の出来事にあった……



数分前、獄寺はアジトの一角にある書物庫にいた。

久々のオフを利用して、本の棚に囲まれた場所に設置された机の上で、黙々と読みふけっていた獄寺だったが、手元のそれが一区切りついたところで視線を外して大きく伸びをした。

…と、そこへ誰かが部屋へ近付いてくる気配を感じた。
誰だ…?と思い、ちらっと視線だけを扉へ向ける。
こんな分厚い本に囲まれた場所に来る奴なんて、仕事でよほど必要な調べものがあるか、もしくは…俺のようにまれにこういう分厚い本を好んで読みそうな奴…スパナか入江くらいのものだろう。

ーしかし、入って来たのは意外な人物だった。

「おや、これはこれはスモーキン・ボム様。読書中でしたか」
相変わらず本がお好きですねーと言いながら入ってきたのは、ジャンニーニだった。
研究か何かに使ったのか、両手で本の山を持ちながらよたよたと部屋へ入ってくる。
その背中には、何が入ってるのやら…でかい黒い包みを背負っていた。
「そうだ、調度よかったです。実はずっと研究し続けていた物が先程完成しまして。是非見ていただいて…」
「断る。帰れ。嫌な予感がする。頼むから他を当たってくれ」
「そ、そんな即答されなくても…。私も、昔のような失敗はもうしませんよ」
そういって尚も見せようとするジャンニーニ。
そして、背負っていた黒い包みを獄寺の前に置き、その包みを剥ぎ取った。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ