短編

□婚前挨拶
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現在、俺は敬愛なる十代目こと、沢田綱吉さんと…その、いわゆる「お付き合い」をさせていただいている。

…だからって
この状況はどうなんですか…?十代目…


《婚前挨拶》


「ねえ、獄寺君」

いつものように、学校から二人っきりで帰ろうとした時、十代目が優しく微笑まれた。
この笑顔が俺は大好きだ。
すごく暖かくて…
「俺達、付き合い初めて少したつじゃない?」
優しくて、力強くて…
「そろそろ、ご両親に婚前挨拶しておこうかと思うんだけど」
そうそう、ご両親に挨拶を………って、

………え…………?

「ぇえぇええええー?!?!」



…で、
今の状況になるのだが…

「あの、十代目…」
「何?獄寺君」
「先程…両親に挨拶が何とかって…言ってませんでしたっけ…?」
あのまま流れで連れて来られたのは、何故か保健室の前で。

「うん、だから今から挨拶に…」
「や、ここ保健室…」
「うん、だからね今からシャマルに挨拶に…ね!」
「あの、シャマル…俺の親じゃな…」
「さあ、行こうか♪」
…聞いてませんね、十代目…

コンコン…

「…」
「…」
「あの…」
「ん?」
「…入らないんですか?」
ドアをノックしたのに一向に扉を開けようとしない十代目を不思議に思って聞いてみると、
「やっぱり返事があってからの方がいい気がして」
…そういうもんですか?

ガラッ!!
「うるせぇな、何外で騒いで…」
「やあ、シャマル。今日は俺達にとって、一世一代の決心話があるんだけど?」

ガラガラッピシャン!!

「ちょっ!?何閉めてんのさ?!」
「帰れ。ボンゴレ坊主の爽やかなまでの笑顔を見たら嫌な予感が清々しいまでに感じてくるからだ。」
「まっ…ここへ来た意味なくなるだろ?!」
「知るかっ!!つーか、横開けの引き戸を押すな!外れるだろっ!」
「死ぬ気で外す!」
「こんなとこで無駄に体力使うな!!やめっ…アホーー!!」


ーー10分後ーー


「で?一応聞いてやる。何だ?」
観念して中に入れてくれたシャマルが、椅子に座って、嫌そうな顔でこちらに向き直る。

いや、そんなことよりも
「…てか、十代目。なんで俺達ベッド上で二人並んで正座してるんですか…?」
「え?雰囲気作りってわけでもないけど、こういうときは日本ではこうやって座って挨拶するんだよ」
「そ…そうなんですか?」
…知らなかった…
「でも…確かに、ベッドの上じゃあんまり雰囲気出ないんだよね〜…、ねえ、シャマル、和室ないの?」
「あるか!ボケ!」
すぐさまツッコミが返ってくる。

「まあ、いいや。本題に入ろう」
何事もなかったかのように話を続ける十代目。
…流石です。

「シャマル…」
真剣な顔付きで、シャマルと向き合う十代目。(カッコイイです!)
「息子さんを、お嫁に下さ「却下」」
「…」
「…」

「…フッ…そう言われるくらいは想定済みだよ、お父さん」
「黙れ。お父さん言うな。そして、今すぐ帰れ。」
「ふふふふふ、これくらいの事で引き下がる俺だとでも?」
「ははははは、さすがにしつこいな」
…二人共…目が笑ってない…

「ともかく、二人の結婚を絶対認めてもらうから、お父さん!」
十代目、結婚って…日本じゃ男同士無理です。
それ以前に、俺達まだ中学生です。
「俺が認めるなんてことは、絶対にありえん!」
シャマル、つっこむとこ、そこじゃねぇよ。他にもあるだろ。

思ってはいても、目だけマジモードの二人に何も言えなくて。

「大体、何が嬉しくてお前のようなヘタレなんぞに大事な隼人をやらなきゃなんねぇんだ!」
「…よし、言いやがったな、コノヤロウ。ちょっとそこに直れ」
「何が「よし」だっ!何でお前のほうが上から目線なんだ?!お前頼みに来てるんだろ?!」
「それは、ブラッド・オブ・ボンゴレの特権です」
「何でも血で許されると思うなよ!単なる我が儘だぞ、それ!」
「お父さんが聞き分けないからだろ?!」
「うるせぇ!俺には隼人の幸せを守る義務がある!」
「獄寺君の幸せは、俺が作る!てかそれって、親のエゴじゃないの?」
「エゴじゃねえ、親の愛だ!」

…すげぇトーク…
二人共、どこで息継ぎしてるんだか……
…じゃなくて!!
「あ…あの…ちょっといいですか?」
「何?」「何だ?」
同時に二人がこちらを向く。
や…だから、顔は爽やかなのに目だけが怖い…

「あ…えーっと、その、基本…シャマルは俺の親父じゃない…わけで…」
「「小さい事は気にするな!」」
何で二人共、こういうとこだけ無駄に息ピッタリなんだ…?
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