□伝心
2ページ/6ページ

「ー…なあ、クローム」

その日の午後、私と隼人は公園のベンチで腰掛けていた。

その小さな公園は、近くにもっと大きな公園があるせいか、あまり人が来る事がない静かな場所だけれど、私は木々ばかりざわめくこの限られた空間がとても好きな場所だった。

隼人と会うのはいつもここ。

今日も偶然、ここへふらりと足を向けたら隼人に出くわした。

…ううん、嘘。
偶然なんかじゃない。
本当は隼人に会いたくて、ここに来れば会えるんじゃないかと期待していた。
隼人もひょっとしたらそうなのかもしれない。
そうじゃなきゃ、こんなところまで足を運ばないもの。

私達はここへ来て、何でもない時間を過ごす。
時には何気ないおしゃべりをぽつぽつとしたり、
時には一緒にぼーっとしたり、読書したり。

どちらかといえば、一緒にいる時間を楽しむ為にいる、そういった感じ。


その日、隼人は私にある事を尋ねてきた。
「なあ、クロームってさ……会話に奥手なのかと思えば、意外と物事を直球に言ってくる事多いよな」
手元に掴んだ缶ジュースを見つめながらそういった隼人の言葉。
先程隼人に貰った自分のジュースをコクリと飲み込んだ音が小さく自分の喉から聞こえてきた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ