長編
□螺旋 〜最終章:相反相対〜
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誰かが誰かの鏡として存在する時
例えそれが模造されたモノであったとしても
全ての生に平等な権利が与えられている
《螺旋》
〜最終章:相反相対〜
ーー人は神と称される造物主にはなれない。
生命誕生の法則を無視して、禁忌のような反理論性な方法で生命を造りだしたところで神になれる訳ではない。
まして、その造りだしたものが自然に作り出された生命のように、欠点なく完璧に作れる事など皆無なのだ。
……元より俺にはそんな事、どうでもいい。
ないものを造り出すとか、そういった難しい事には興味ないし、こんな事がなければ本当に一生関わりもしないどうでもいい事だっただろう。
ただ俺は……大好きな人とずっと一緒にいられる未来がほしかった。
それは今でも同じだよ。
そうだろ?
獄寺君ーー…
…相変わらず、全てを包み込む強大な存在である大空は、今日も俺の心を蝕むように良く晴れている。
腹立たしい、とあの雄大な包容力を持った青空にそんな憎まれ口を叩くのは、きっとこの世界で俺だけなんじゃないか…。
そんな風に思う事がある。
だってあの大空は、多分人々には恵みであり、希望のような輝きであり、そして包容力であり。
そんな…優しい存在なのだろうから。
ならなんで五年前…あの時、俺を見捨てるように、俺を嘲笑うかのように俺を清々しい顔して見下ろしていたのか。
…人の心情は、時に周りの風景全ても残酷に見せる事がある。
窓辺から見上げるその存在をそうやってモヤモヤと見つめる自分こそ、相変わらずなのかもしれないけれど。
「ー…ツナ」
「うわあっ!?」
ビクリと面白いくらいに身体を跳ねらせた俺に、不可解そうに顔をゆがめていったのはリボーンで。
「何してんだ、お前は?」
「お前がノックも無しにいきなり声をかけるからだろ!?」
何だか無性に恥ずかしくて、腹いせのように睨み付けるが、そのリボーンがいつものように飄々とかわすわけでもなく、何だか複雑そうにじっとこちらを見返すだけで。
何なんだろうか…?
いつもと違うリボーンの雰囲気にこちらの方がたじろいでしまう。
「リボーン…?」
「…おい、ツナ。お前、出来るだけ早く獄寺かフェリラのところへ行ってどちらかを説得なり何なりしてこい」
「は?ちょっ…何言って…?」
あれだけ慎重案のような事を言っていたのは誰だったのか。
急かすようなそれは、何だかリボーンらしくない。
いや…確かにコイツは昔から無謀な事を平気で言う奴だったが。
でも今回はちょっといつもと違う、そんな気がする。
「リボーン、どうしたんだよ」
「ツナ…時間はたくさんあるようで、意外と限られているもんなんだ」
何の話をしているのだろう。
理由を話してくれない家庭教師に、不安に似た感情が沸き上がる。
「その計りを間違えれば、手遅れになる事もあるって事…ちゃんと頭に入れて置けよ」
そういって、直ぐさま後ろを振り向いて部屋を出ようとするリボーンに詰め寄るように声をかける。
「お、おい、リボーン!何だよ急に!理由くらい言っていけよ!」
そう、リボーンの肩を掴もうとした時。
それより先にわずかに顔だけこちらに向けたリボーンの目を見てそれを躊躇させた。
あの時と同じだ…と思った。
五年前、獄寺君の様子をちゃんと見ていろ……そういったあの時と同じような目をしていたリボーンに、ただ頷くしかなかった。
『感慨』
その人が見据える先が何なのか
その先がわかるなら
誰もが迷うなんて事、ないのだろう