短編
□闇夜の共有
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貴重な時間
貴方と共に在る幸福
全ては今日この日の為に…
《闇夜の共有》
ー静かな夜だった。
風もなく、闇夜に浮かぶのは、ただ静寂だけで月だけがその姿を象徴していた。
「めずらしいですね。貴方が甘えてくるなんて」
月の様にキラキラ輝く銀の髪を持つその人は、ソファーに座る自分の膝上に頭を置いて、瞼を閉じたまま寝そべっている愛しいヒットマンに話しかけた。
「悪いか?こんな日くらいお前を堪能させろ。大体、俺の誕生日を祝いてぇって言ったのはお前だぞ?」
「そうですよ?悪いどころか、むしろ嬉しいんですよ。普段からこのくらい甘えて下さればよろしいのに…」
「………その言葉、そのままそっくり返してやる」
はあっと息をついて、その漆黒の瞳を開く。
その暗い瞳を見つめていると、吸い込まれそうになって怖くなるのと同時に、全てを包み込まれてしまいそうなのに安心感がある…何故かそんな不思議な気持ちになる。
(何か…凄く見透かされそうになる……この人の瞳を見つめているだけで)
でも、嫌いではない。
その漆黒が、逆に透き通るような美しさを兼ね備えていて、いつまで見つめていたくなる。
…まあ、そんな事…恥ずかしくてできないけど。