モノクローム

□幸せな日は今日!
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筈だった………。



誰かいる。

誰かなんて、わかってる。


嘘だよね…?




見間違う筈がない。

だって、銀髪なんてそうそういないんだから。








「あれ?
よぉ。お前もサボりか?この場所知ってんのは俺だけかと思ってたぜ」



私の姿を見付けると、少し驚いた顔をした後、獄寺君は笑ってそう言った。


そう。
その笑顔に惚れたのだ。




「う、うん…。
体育なんてやってらんないから」


「だよなぁ…」



やばい。

凄く緊張するっ。


挨拶くらいしかしたことないのに、
私は今、獄寺君と話てる…


「お前……。見たことあると思ったら、同じクラスだよな?
確か…椎音だっけ?」


「うん。大宮椎音。獄寺君と同じクラスだよ」


嘘っ

私のこと、知っててくれたの?


すごい嬉しいよっ!!





 
 


「そっかぁ、椎音。俺暇だし、お前も暇だろ?
少し話しようぜ?」


「う、うん!」













私達は、体育の授業が終わってもずっとそこにいた。


彼の話すことは、『十代目十代目』と、綱吉君のことばっかりだったけど、
綱吉君のことを話すその輝いた目が、今まで私が知っていた以上に素敵だった。

最後に、『お前って聞き上手だな』と褒められたことも嬉しかった。





最後の授業の終わりを告げるチャイムが、
とても悲しいBGMとなって、私達の会話は終わった。






「ありがとなっ。おかげで退屈せずに済んだ」


「ううん。私も」
楽しかった。




まだ


まだ言ってないことがある。



「よしっ!十代目をお迎えに行くぜ!!」



まだ私は、言わなきゃ行けないことがある。



誕生日、おめでとうって……。




でも彼は、きっと今日この言葉は聞き飽きている。





私も
プレゼントをあげてキャアキャア言っている女の子達と同じになって仕舞う。









でも、


でも……っ


「ご、獄寺君!」


ん?
と短い言葉を発して獄寺君がこっちを振り向いた。

綺麗な銀髪がさらりと揺れて、思わず見惚れて仕舞って、


でも、
私には言わなきゃいけないことがある。



「獄寺君、
誕生日おめでとう!
今まで生き延びて来てくれて有難う!…?」


な、何を言ってんだ私は!?
なんか上から目線なうえに微妙に告白発言っ

バカだ私。
やばい恥ずかしいっ




俯いていると、

獄寺君がクスクスと笑った。



本当に綺麗な顔で。


「ア、ハハッ…。
お前、面白いこと言うな…」



軽蔑された!?

そう思ったけど、違うらしい。


「椎音。俺、今日いろんな奴に『おめでとう』って言われた。
『生まれて来てくれて有難う』なんても言われたけど、
そんなこと言ったのは椎音、お前だけ」


校舎の外から見える夕焼けが、その銀髪を光らせた。
輝かせた。


夕焼けなんかなくても、彼は十分輝いていた。


「だよな。俺、良く今まで生き延びだな…」


クスクス笑って、
彼は私に

有難う

と言った。





誕生日おめでとう。



そして有難う。







今日から私は

貴方のたった一人の



サボり仲間









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