1859

□知音
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「ねぇ、なんでそんなに悲しそうなの?」


俺が夜中に一人でピアノを弾いてると、コイツはいきなり出て来てそう言った。


「あぁ、そうか。この前は君の誕生日だったからね、」


俺は
自分の誕生日も、
母さんの命日も、
小さい頃にピアノを教えてくれていたお姉さんが母さんだったことも、
教えてないはずなのに
コイツはそう言って一人で納得していた。


結局、俺がピアノを弾き終えるまで雲雀はそこにいた。















「ねぇ、なんでまたそんな風に悲しそうなのさ」


今日も雲雀はそこに来た。

音楽室の、扉の外。


俺は何も答えなくて、コイツも答えを必要としている訳じゃないようだった。

それでも雲雀は今日もずっとそこにいた。













「ねぇ、
なんで今日は、そんなに嬉しそうなの?」


ある日、雲雀はいつものようにそこに来たが、俺に問う内容はいつもと違った。
その後も。


「僕が当ててあげようか。君が嬉しそうにしている理由」



俺は黙って雲雀の話しを聞きながらピアノを弾いていた。


「僕がまた今日も此処に来たから。そうでしょう?」

雲雀の学ランがフワリとなびいた。



『そうだ』とは言わなかった。
単純に悔しかったから。



「獄寺隼人。
君は僕のことが好きだ」


そして僕も………










「ねぇ
ピアノ、止めないでよ」













自分勝手な奴だと思った。








それが最初。













そして最後も……




 
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