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□いい大人が何してンだよっ!!
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スーツの前を開けて、ネクタイは中学時代を思わせるほど緩んでいる
中のワイシャツはかろうじてボタンが2,3個、とまっている

そんなだらし無い姿で
彼は寝転がっていて…

ヒトが来ても起きようとしない

床に大の字になる彼は、

ぼろぼろと泣いていた








「隼人君、」



僕が彼の名前を紡いでも、
彼の視点は天井のまま



「どうかしたのですか?」



大の大人、しかも男が涙を流す

どうかしてない筈がない



ましてや僕は彼の泣く理由も知っていて

その気持ちも知っている



…そう、僕だって同じ気持ちなのだから



「隼人君。そうしてるとまるで、中学生の頃の君みたいですねぇ」




そう微笑むと、彼はやっと口をきいてくれた



「…ガキだってことかよ。そんなこたぁわかってる」



「そういう訳ではないんです。気分を害したのなら済みません」


淡々と言葉を発した彼に驚いた

顔にはちゃんと感情が現れているのに、言葉にはそれがない

…器用なものだ、
と的外れなことを思った





泣く彼の横に座った


ぼろぼろ、それが止まる気配はない



「…隼人君、」




「む、くろ…。オレはお前に、甘える気は…ねぇ、よ、」



そう言いつつも、彼の涙を拭う僕の手を振り払うことはなかった


「あいつ以外に、甘える気は、ねぇ…」


そう続けて、彼は泣く

僕は
はい、とだけ答えた




「…雲雀が、オレに隠し事してンだ…。じゅうだいめと、隠し事してるんだ、恭弥がっ」



うわぁぁ
とますます泣き出して仕舞った大人を、僕は懸命に宥めた





「でもオレ、知ってるんだ。
恭弥がオレを危険に晒さないように秘密にしてるってこと!
言わないことで、オレを守ってくれてるんだっとことっ!
だからオレっ、なにも、何も出来なくて!
自分の不甲斐なさに腹立って、
十代目に嫉妬して、そんな自分を殺したくって、」

 





僕まで涙が出て来たのは、おかしいことではないでしょう



「恭弥の気持ちわかるっ、多分オレも、恭弥の立場ならそうすると思う。
でも!嫌なんだ、駄目なんだ!頼って欲しい、教えて欲しい、…一緒に、戦わせて欲しいっ!!
どうしたらいい?何も出来ないっオレは何も、何も出来ないんだ!!
わかるだろ!?お前なら、骸ぉ!」




だって彼の気持ちは痛い程わかる

僕の心を代弁するかのように、彼は叫んだのだから






痛い。痛い痛い痛い痛い!

痛いよぉ



こころが、ぜんしんが痛いと脳に訴える


その脳さえも痛いんだ





「つな、よし、君っ」










大人の男が二人、

莫迦みたいにみっともなく、
泣くのでした







愛してるのが、


愛されるのが、










こんなにも痛い

















 
だから僕は彼を甘やかすことも出来ず、

彼と一緒に泣くのでした

















痛みを共有したところで楽になる筈はないと知りながら







痛みを共有したい相手は、お互いお互いではないと知りながら
















僕等は泣くのでした






†END†


 
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