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□指切り
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「隼人っ、待った?」


ぱたぱたと小走りで並中の校門前に来た美少女に、
放課後だがまだまばらに残っていた生徒達の視線が一斉に注がれる

それほどの美人に負けないくらい整った顔の少年が、軽く手を振り彼女を呼び寄せた


「いや、さっきまで十代目が話し相手になって下さっていたところだから、退屈してねぇよ」


少し乱れた髪を撫でて整えてやる
特徴的な髪型は可愛らしくぴょこりと揺れた



「隼人、これから時間ある?」


「お前の為に空けておいたぜ」



その通りなのだがその物言いに少女がくすくす笑う


「なんか隼人、骸様みたい」


「はぁ!?嫌過ぎ、巫山戯んな!」


「だってその言い方、骸様と同じイタリアの人みたいよ?」


少女は獄寺が四分の三はイタリア人なのを知りつつ微笑むと
獄寺は微妙な顔をした後、
ほら、行くぞ
とパイナップル頭を軽く押して、止まっていた歩みを進めた











「で、何処行くんだ?」


「素敵なお店があるの。ゴシック系のアクセサリーショップよ
隼人も気に入るといいなって」


「お前が気に入ったならオレだって気に入るだろ」



 
口説き文句などではなく、二人の趣味は似たものであるからそう言う


クロームは嬉しそうに微笑み
ここよ
と店へと案内した








「可愛いでしょ?隼人、これなんて素敵」


獄寺も気に入った店内で
クロームが黒色を基準としたチョーカーを指す
他にもあれこれとクロームは獄寺の身に付けそうなものを選んで見ていく


「ねぇ、どれがいい?
やっぱりリングの方が雰囲気いいかな、
でも闘いの邪魔になっちゃうよね…」



そんなクロームを獄寺はよくわからないと思っていた

ただたんに一緒に買い物をしたいだけなのだと思っていたのだが、先程から
隼人、隼人、と獄寺の好みを尋ねる

どうしてなのかと獄寺は聞いた


「なぁ、なんで此処来たんだ?買い物したかったんじゃねぇの?」



自分の優しくない物言いに嫌気がさすがどう言ったものか分からずそう言えば
クロームはきょとんと獄寺の方を向く



「隼人の誕生日プレゼントを買いに来たのよ?気に入ったの無い?」





さも当たり前のような顔で言われ、獄寺は思わず吹き出した


あぁそっか、オレの誕生日プレゼントか
そうかそうか、成程な

何がツボに入ったのかくつくつ笑う獄寺をクロームは目を真ん丸にしてじっと見ていた





「じゃあ、これなんてどうだ?」


一通り笑った後、ひとつのリングを指す


「…素敵、シンプルだけど可愛い。隼人の白い指に似合いそう
隼人何号かな、ね、私にプレゼントさせてくれるでしょう?」



他のものよりも比較的シンプルで細身の、女性にも合うデザインだ


獄寺は実は先程からこれをマークしていた
クロームに似合うと思って





「それは却下だな。女性に貢がせるなんてイタリア男が廃るだろ」


「えっ」


「済みません、この指輪の彼女に会うサイズを下さい」


「えっ、え?」



「あ、包まなくていいス。いいよな?」



「うん、え?ぇえっ」








獄寺は店員から指輪を受け取ると、クロームの左手を取ってそっと口付けた







「ありがとう、凪
お前がいてくれたから、オレは今まで生きてこれたんだ。これからも、よろしくな」






一番小さいサイズでも楽々と指輪が入って仕舞った彼女の薬指に獄寺は微笑む






「泣き虫だな、髑髏は」



「は、隼人が狡いんだよ…!
私が、誕生日おめでとうって、言いたかったのに!」


 

「お前がいてくれるだけで十分だ」



「骸様みたいよ隼人、泣いちゃうわ」



「泣くなよ、ばか」



これは予約な
と獄寺は言った


「お前の方がどうしても早く此処に指輪をつけていい年になる。だからまだまだガキなオレから、まだガキなお前に、予約」







クロームは、空っぽじゃない方の瞳から綺麗な涙を溢した








†END†




 

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