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□参加自由
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「好きだよ、獄寺隼人」











犬猿の仲

と思っていたあいつからいきなりそう言われ

俺は、自分でも間抜け面だとわかるくらいな表情をして

吹かしていた煙草をぽとりと落としたのを覚えている。







「は?」



「君も僕が好きでしょう?」



疑問形な筈なのに確信しているかのような笑みであいつはそう言ったんだ。


俺は何も言えなかった。

そしてあいつから顔を逸らした









余りにも唐突に、バカげたことを聞かれたからだ。
ただそれだけの理由だ。


決して、その時自分の中のあいつへの感情が
『敵』や『友達』や『仲間』
ではないことに気付いたから黙った訳ではない。

そう、
決して…









黙った俺に、勝ち誇ったように笑い、あいつは続けた。






「そうだね、
素直になれない君に時間をあげる。………僕が他人に優しい…気持ち悪いな。まぁ相手が君だから、」




俺だから、なんだ。

ツッコミどころは漫才だが、生憎俺は十代目程のツッコミ職人じゃない為、
あいつのそんな電波な発言を黙って聞くしかなかったんだ。





「かくれんぼだよ」





「は?」


やっと声が出たことに内心ほっとし、あいつの顔を見た。


見なければ良かった、と思ったのを覚えている。


あいつが、今まで一度も見たことのない
酷く優しい顔をしていたから…



何故かあいつのその表情に決まりが悪くなり、また顔を背ける


「か、かくれんぼって…」


何言ってやがる、
と悪態を付くつもりが、
喉はからからに渇いていて、
声は俺の意思に反して出て来なかった。


「かくれんぼ。僕は君が好きだよ。君が僕を好きなら、僕を見付けて、捕まえて?」


ね?
と穏やかに、小さな子供に諭すように言ったあいつ。




言葉の意味なんてわからず、

あいつが屋上から消えていった方向をじっと、いや、ぼやりと見ていた。






あの時
俺があいつの言葉を最後まで聞かなかったら、きっと変わっていただろう。

あいつの言葉にこんなにも悩まされることはなかっただろう。



恋なんて愛なんて
そんな感情、勘違いだろ、
嘘だろ。



あいつが俺を
『好き』だなんて、質の悪い冗談だ。

そう思えただろう。





かくれんぼだなんて
見付けてだなんて




     無い












 







もう駄目だ。
ごめんなさい十代目、俺は負けて仕舞います。

畜生、悔しい、

そう思った時

鳥が歌った。



その歌は『ヒント』だった。






人は安心すると笑うらしい。
完全の頼もしさに接すると、ネジが緩んだように笑う。

と、何かの本で見た。


それと同じかはわかんねぇが、
なんだか知らねぇが変に可笑しくて、笑いが込み上げて来て、

自分がもう死ぬかもって時に、何笑ってんだと思うが


その黄色い鳥の歌う歌に笑った

あいつ。
学校の校歌が好きとか、バッカじゃね?




「なに笑ってんらびょん」



あ?
そんなん俺だって知らねぇし













ただ、









この勝負も、
あいつとの勝負も、









     勝った









と思って














ダイナマイトは爆発し、



機嫌が悪そうなお前。








「自分で出れたけど…」




バカ野郎。


俺がわざわざ『かくれんぼ』だなんてお前が考えついたくだらない勝負に参加してやったんだ

そこの雑魚二匹はくれてやる。

だからもっと嬉しそうな顔しろよ




「へへっ…」




バッカみてぇ、



バカだゼ大概、

俺もお前も







回りくどいことしやがって







ほらよ、



お前とのかくれんぼ、俺が勝ちだ

























    「見付けた」
















充分だろ?


好きだ、なんて言ってやんねぇよ





「俺の勝ちだろ?」




「僕の勝ちだよ」



「俺だろ」


「どっちでもいいよ、もう」


「どっちでもいいか、もう」













また、

見たことない顔で



こいつは笑った。






多分俺も、笑ってる。







見付けたゼ。好きだ、雲雀







†END†


 

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