1859
□みっつのねがい
1ページ/1ページ
「「誕生日おめでとう!」」
「えっ、あ、…ああありがとうございます十代目!」
「え、獄寺、オレは?」
「あはは、獄寺君その反応、もしかして自分の誕生日忘れてた?」
「獄寺ならありそうなのなー」
「あ、はは…お恥ずかしながら」
放課後、校内巡回中
そんな会話を聞いた
嘘だなと思った
きっと彼は今日を忘れたりはしない
たとえどんなことが遇ったとしても
みっつのねがい
まだ昼間は暑い日が続くが、夕暮れ時の屋上となると風が冷たく少し肌寒かった
それでもそのことで僕に文句を言うのは間違っているだろう
さみー…ヒバリ、なんとかしろよ
と煙草の煙を吐きながら吐き捨てられてイラつく
だが、そのセリフへも喫煙についても今日だけは何も言わないであげる
正確にはもう暫くの間は言わないであげるけど
「君が何を思うか知らないけど」
「何を思うかって…、寒いと思ってる」
「節を折るなバカ
…君が今日何を思うか僕はわからないけれど」
獄寺は目を丸くして僕の方を見てから、そっと伏せた
話を続ける
「だけど僕は誕生日だからって何をしてあげればいいかわからない。きらびやかなパーティがお望みかい、それとも甘いケーキ?違うだろう?だから
今日は君の願いをみっつ、僕が何でも叶えてあげる」
誕生日プレゼントだよ
と青空を見て言ったら、獄寺は笑うような泣いてるような変な顔をした
「……みっつだけかよ、」
そんな変な顔でやっと言葉に出来たのはそんな皮肉だったらしい
しょうがないから彼の彼を見てあげた
「みっつなんてテキトーに言っただけ。少ない方が有り難みが増すだろう?本当は君が望むだけ何だって」
微笑めば、
今度は泣きそうな顔をした彼は、
自分でもわかっていたのか、俯いて表情を隠した
「……、何でも…?」
「うん」
「…ほんとか?」
「僕が君に嘘付いたことあるかい?」
「………じゃあ、抱き締めろよ」
君が今日何を思っているのか僕は知らない
君が今日どれだけ苦しいのか僕は知らないけれど
「これだけで満足なの?」
隙間がなくなるくらいに抱き締めて尋ねると
「なわけあるかよ!」
という泣き笑いが返って来た
君の願いを言ってご覧
僕は此処に、いるから
†END†