番外編

□奪われた視覚
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「Hey!おまえらも来るか!!」


筆頭のその言葉に、俺らはすぐさま飛びついた。




「YA-HA-!!」


テンションが上がった筆頭が拳を振り上げ、声を上げる。
俺らもそれに続いて叫んだ。
まるで風になったかのよう。
馬でどこまでも駆け抜けていく。

―――と、まあ、ここまでは良かったんだが、筆頭は小十郎さまに内緒で来たのか、ぶつぶつ小十郎がどうのこうの呟いて青ざめた後、帰るぞ、と手綱を掴んだ。
小十郎さま、怖ぇーからなぁ…。
他の仲間と顔を合わせて苦笑する。
その帰りに、せせらぎの音が耳に聞こえた。


「筆頭ー!川があるみたいですぜ!」


それを報告すれば、ここらで一息入れるかと返ってきた。…できるだけ時間かけてぇのかな筆頭は。
でもどっちにしろ怒られると思うんですが。
先頭になって茂みを抜ければ―――川の向こうに天女がいた。
ポカーンと間抜けな顔になる。
なんだコレ。実は俺は死んでいて、あの世に来ちまったのか?
戸惑っていると、筆頭が前に出てきて……ああ、行っちゃダメだ。川を渡ってはダメです筆頭。ここはあの世で、この川は三途の川なんだ。戻ってこれなくなっちまう。
だけど声は出ずに、ただ視線だけは天女に釘付けだ。
筆頭は普通に話しかけていて、天女は微笑む。………あれ?なんともないのか?
あ、別に三途の川じゃねぇのか。それに天女じゃなくて男だった。自分の勘違いに赤面しちまう。
それでも視線は男へと向かう。
いつもなら、なよなよしやがって男のくせに、とか思うが、最初に天女と勘違いしちまったせいかそうは全然思わなくて、こう…上品、なんだよな。優雅ってぇのか、粗暴な俺らとは吸っている空気さえ違うんじゃねぇかって、思っちまう。
だからなのか、目が離せねぇ。
仲間も俺と同じ気持ちなのか、ポカーンとした顔で男を見ている。

筆頭に来いって言われたけど、ムリです筆頭。なんかその御仁に近づけません!



(俺らなんかが近づいていいのか、なんて思ってしまったんだ)








<<配布元:青二才>>

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