成り代わり
□過保護なお人
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……………政宗様は、ご自分のことを解っておられない。
今までどれほどの輩を魅了してきたことか。おそらく、これからも政宗様に惚れるヤツは増える。いや、確実に。
だが、この俺の目が黒い内は、集る害虫など潰す!
ご自分の馬と戯れる政宗様を見ながら、俺は改めて強く決心する。
「ははっ、くすぐってぇ!」
無邪気な顔で笑っておられる政宗様の姿からは、普段の不敵なご様子が鳴りを潜めていた。
これは……部下たちには見せられねぇな。しばらく使いモンにならなくなる。
「……政宗様。もうそろそろお戻りを」
「Ah?もうそんな時間かよ」
不満気な顔をする政宗様に、心行くまで戯れてくださいと言いそうになったのをグッと抑える。あ、危ねぇ。
馬小屋を出て、しばらく歩いていると、政宗様が声をあげられた。
「Shit!鼻緒が切れちまった」
生憎、草履を直すための紐を持っていない。着物を裂くか?とも考えたが、目的地はすぐそこだ。
部屋に着いてから直せばいい。
ならば俺が取る手段は。
「では、僭越ながらこの小十郎めが政宗様をお運びいたします」
「……Ha?あ、いや、何もそこまでしなくてもいいぞ」
裸足で歩いていきゃいいだろ、と言われ、たまらず進言した
「なりませぬ!政宗様のおみ足が土に汚れるなど、あってはならないことです!!」
政宗様の目が、躊躇うように揺れた。
これはもう一押しか。
「政宗様、よろしいですね?」
「…OK」
渋々、というように頷かれたので、俺はさっそく政宗様を抱える。
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