短いもの

□誘いの夜に惑う
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空の色が濃紺へと変わった頃。


静雄と門田が観ているDVDのエンドロールが流れ始めた。

エンディングの曲は、映画の中で流れていた主人公の男の悲哀を現したピアノ曲。

部屋の中が、外の風景と相成ってどこかもの悲しげな中に、声が一つ。



「門田……。」



ぎしり、とソファが軋む音と共に呼ばれた声に門田は静雄の方へと顔を向ける。静雄の顔は唇が触れる程近くにあり、門田は思わず体を引くが、それを追って唇を合わせてきた。




「静雄、なんだ?次のDVD観ねぇのか?」


「んー、別にいい。それよりも今は、お前とヤらしいことしたいな……?」




と言うと、妖艶に微笑むと再度門田へとキスを仕掛けた。

数度軽いリップ音を立てると、ぬるりと舌を門田の咥内へと進入させ、ねっとりとまさぐる。
静雄は門田の舌と絡ませ、歯列をゆっくりとなぞり、口を離して舌をツンと尖らせ、糸を引く唾液を見せつける。最後の仕上げと云わんばかりに門田の下唇をかぷりと甘噛みする。




「どうする、……門田?」




口角を上げ、額をこつりと合わせ熱のこもった瞳で尋ねられる。答えは一つだろ、と言わんばかりだ。
もちろん、門田も愛しい恋人にあそこまであからさまに誘われた上、まだまだ盛りのついた年だ。



答えは、当然―――――、




「ヤるに決まってんだろ。」


「だよ、な。今日は俺が門田のこと気持ち良くするから。」




色の篭もった視線を向けたままに、門田の足元に降りると、まだ萎えていても十分に存在感のある陰茎を取り出す。


ちらり、と上目で門田を見て、口をゆっくりと開ける。
ぬらぬら鈍い光を反射させる赤い舌が門田の視界に入り、ぞくりと背筋に興奮が走る。


陰茎の先端をちろりと舐め、亀頭を熱い咥内に含む。クチュクチュとたっぷりと唾液を絡め、愛撫しながら、亀頭から流れ落ちる淫液を絡めながら竿を扱く。

徐々に天を仰いでゆく陰茎を口腔内から解放すると、静雄の恍惚とした表情が現れる。




「はぁっ、……。お前の舐めてたら、興奮した……。」




唾液と淫液とが混ざり合った半透明の液体が口の端から首筋を伝わせながら、告げてくる。
静雄はゆるりと身体を真っ直ぐに起こすと、緩く張ったジーパンのフロント部分が見える。緩慢な動きでジーパンを脱ぎ、自身の情欲の証を門田へと見せつけている。




「ん、はやくお前の、欲し……。」




とろり、と快楽への期待に淫らな顔をし、濡れた片手を後ろへ、もう片方は再び門田の陰茎へと手を伸ばした。

より一層ねっとりとした舌使いで再び門田のペニスに奉仕を始めた。

喉の奥まで喰わえ込み、じゅぽ、じゅぽ、と頭を上下させ、裏筋に舌を強く押し付け、舐めあげる。時折、じゅるじゅると先走りを嚥下する音と、鼻から抜ける息が門田の耳によく響いた。


門田の視界には、静雄が自身を口淫しつつ、後口を自らの細く白い指でぐちゅぐちゅと解す姿が入り、テレビの淡い光に照らされる静雄の姿が入る。

その光景に門田の興奮は増してゆく。


股の間で揺れる柔らかで癖のある金髪をするりとなぜると、嬉しそうに上目遣いで目を細める。




「……もう、大丈夫か?」


「んっ、……はぁっ。も、大丈夫。」




唇をペロリと舐め、艶やかに口角を上げて笑う。くるりと上半身を振り返り、机の上に開栓したままに放置されていた瓶入りのリキュールを三分の一程煽り、門田の膝に跨る。


熱っぽい吐息をこぼし、じらすようにゆっくりと門田の肩に手を置いて、腰を落としていく。亀頭部分のみをぬちゅぬちゅ出し入れさせて、短い喘ぎ声を上げて体を上下させて、息を乱しどこか嬉しそうに笑い、門田の唇を求めた。

静雄の行為にじれた門田は、静雄の腰を掴むと一気に根元まで挿入れた。




「あっ、あっ、あっ!ふぁっ、な、なに、かどた?えっ?あっ、あーーーッ!!」




静雄は門田の硬く立ち上がった陰茎を全て、何の構えもなく飲み込み、それに加え良いところを強く刺激され、白濁をあっけなく散らした。


はぁ、はぁ、と荒い息をつきながら、自身を一気に挿入した門田を潤んだ瞳で恨めしげに睨む。




「門田の、ばか……。」


「悪い。我慢できなかったんだよ、お前が厭らし過ぎるからつい、な。」


「んだよ、それ。そんなのっ!あっ、やっ、門、たぁ……っ!いきな、りぃ、ふっ、あっあぁっ!うごっ、く、なぁ!!」




文句を言おうと口を開けば、腰をゆさゆさと動かされ言葉は嬌声へとなる。
不服そうな目は、次第に快楽に染まりゆき、静雄も積極的に腰を振り出す。





快楽のみを追い求め、娼婦のように厭らしく細腰を揺らめかせる静雄。

静雄の胸に淡く色づいた乳首を、歯を軽くたてながら吸い上げ、舌でグリグリと押し潰す。

門田の乳首への愛撫で、今までよりも更に高い嬌声があがる。




「ひゃっ!あっ、ふっ、あっ!それっ、らめぇっっ!!」




腰の動きを休ませずに切れ切れに言葉を発する静雄に、意地悪そうに口の端を形作って門田は返す。




「何、いってんだよっ!好きだろーが、ここっ!」


「そっ、だけどっ!すぐに、イッちゃっ、から、だめぇ!いっしょに、イきたぁっ!んっ、んっーーー!!」




静雄の可愛らしい物言いに門田は、カッと頭の中が白くなり、静雄の口を塞ぐ。




「んっ、ふぅ、んんっ、ふっ!んっ、んっ、んっ!」




門田は舌を絡め取り、絡ませ合い、応えるように静雄は舌を蠢かせる。

舌は絡み合い、唾液を交換する。

口の中に広がるリキュールの甘い味の中に僅かな苦味が広がる。

唇を離しては何度も重ね、言葉もなく興奮を互いに伝える。



薄暗い部屋の中には、肌がぶつかる乾いた音とソファが軋む鈍い音、荒い息、わずかに漏れる嬌声、粘着質な水音。




「んっ、あっ、あっ、もっ、イクッ!むり、が、まん、できないっ!!」


「お、れもだっ!お前ん胎内に出すぞっ!」


「ちょー、だいっ!かどたの、あついのぉっ!」




門田と静雄の動きは更に激しくなり、結合部は白く泡立ち、お互いの熱しか分からなくなってゆく。




「かどたっ、かどたっ、かどたぁっ!」




幼い子供のように何度も名前を呼び、追いすがる姿は愛らしくもあり、妖しく艶めき、加虐心を煽る。




「はっ、もっ、イくか?静雄っ?」


「あっ、もっ、イ、くっ!!かどたっ、おねがっ、イかしてぇっ!」




快楽を追い求める動きは、上り詰めようするものとなり、乾いた音の間隔は短く、互いの欲に濡れきった呼吸音がやけに良く耳に届く。
部屋の中に未だ流れるピアノ曲が卑猥すぎる雰囲気と不釣り合い過ぎ、どこか滑稽だ。




「あっ、あっ、あっ、あーーーっ!!」


「ふっ、くーーっ!」




絶頂に達した静雄は腹の上に、門田は静雄の胎内へと白濁を吐き出した。
どさり、と門田の肩へもたれかかり乱れた熱っぽい息を吐きながら、甘えるようにすり寄る。そんな静雄の柔らかな金髪を撫で、キスを髪、首筋、頬へと滑るように送る。


くすぐったそうに身をよじると、体を緩慢に起こし、ちゅっ、ちゅっ、と可愛らしい音をさせキスを返す。


子犬の様なじゃれ合いをしていると、門田は不意に少し申し訳なさを僅かばかり含んだ男の顔で「悪い。」と言い、静雄の身体を繋がったまま抱え上げ、すぐそばのベッドに押し倒した。




「悪ぃな、静雄。一回だけじゃ終われねぇ。」




きょとんとした顔の静雄に、口角を上げて獣じみた笑いをすると、静雄は妖艶に微笑みかけ了承の証にキスをした。


そして、 部屋には再び甘い声と淫猥な音が鳴り響き門田と静雄の休日の夜は更けていく。



END



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