4月と言ったら桜、花見、入学式!
 童実野高校にもたくさんの新入生が入学してきた。期待と不安に胸をときめかせ真新しい制服に身を包んで初々しい新一年生の様子を見ているとどこか和むとともに、自分達が上級生になったんだと実感する。

「あー…僕らもあんな感じだったのかなぁ」
「そうでしょうね。ふふ、かわいいわね」
「まだ金髪の奴はいねぇみたいだな」
「角刈りもな」
 遊戯、杏子、本田、城之内は渡り廊下から講堂に入っていく新入生達の様子を見ていた。そこでふと城之内が思い出したように問いかけた。
「アテムは?」
「実はアテム、新入生歓迎の言葉頼まれちゃったみたいで。先生に連れていかれちゃった」
 凄いよねぇ、と苦笑して遊戯は持っていた牛乳をちゅ、と飲む。
「あら、それって生徒会長が言うんじゃなかった?」
「今日会長インフルエンザで休みなんだって。そこでアテムに代理頼んだみたい」
「先公も目のつけどころがいいな。アテムってどこか華というかカリスマオーラ持ってるからな。会長より適役なんじゃねぇの?」
「あはは、そうかもね」
 桜の花びらがヒラヒラと舞って地面に落ちていくのを遊戯は穏やかな気持ちで見つめて、ふっと微笑んだ。








「───入学おめでとう、新一年生のみんな。この童実野高校で勉学だけでなく、沢山のことを学んで知って楽しんでくれ。この高校で過ごす君たちの三年間がとても充実することを心より願ってるぜ───新入生歓迎の言葉、武藤アテム」

 マイクから一歩後ろに下がり頭をさげる。パチパチという拍手に見送られアテムは壇上を降りた。
「最後んとこでちょっと笑ったの、惚れそうだったぜ」
「お前が笑顔が好きだったなんて初めて知ったぜ」
 降りたところに待っていたバクラが楽しげに話しかけてくる。
「ほらみろ、あそこにいる女達うっとりあんたのこと見つめてンぜ」
 バクラが示す方を見れば数人の女子達と目が合い『きゃあっ!目があったわ!』と頬を染められた。
「……別に俺じゃなくてお前かもしれないだろ」
「ハイハイ、王サマはシャイでいらっしゃる」
 壁に手をついたバクラに追い込まれアテムは後ずさる。もう次の学校長の言葉が読まれているというのに新入生席からは黄色い悲鳴が聞こえてきた。
「やめろバカ、目立つ」
「残念、新入生にサービスしてやろうとしたのに」
「出るぞ…来い」
「……逆に目立つと思うぜ」
 バクラを引っ張っていくアテムは彼の言った意味に気がついてはいない。だからコイツはほうっておけないんだ、とバクラはそんなことを思ってしまう自分に呆れて笑ってしまう。
 外に出たら桜吹雪が吹いて髪を乱していく。面倒くさそうに髪を抑えつけるバクラにアテムが可笑しそうに笑った。
「…銀色の髪に薄いピンクが映えて……クク、かわいいぜバクラ」
「…うっせ」
 バクラの髪にからまった桜の花びらをアテムは丁寧に一つずつつまんでとっていく。ちょっと背伸びをして見上げてくる彼の笑った顔にどこか気恥ずかしくなって顔をそらしてしまった。
「ン、反対も向けよ」
 取りやすくするために横を向いたわけではないが言われた通り反対を向く。とそこで。

「あ」

 目をぱちぱちと瞬かせてどこか一点を見つめるバクラにつられアテムも同じように顔を横に向けた。
「海馬…?来たのか」
「……貴様等、何を…している?」
 アテムとバクラの視線の先にはめったに学校にくることのない海馬コーポレーション社長である海馬瀬人が若干引いたように立っていた。
「何って……バクラの髪についた花びらとってるんだぜ」
「……バカップルのじゃれあいかと思ったぞ」
 心なしか少し安心したようなため息を吐いた海馬は二人の横を通り過ぎていく。
「今日はもう授業ないぜ?」
「提出物と物を受け取りに来ただけだ」
「社長サンも大変だねぇ」
 ぴゅう、と口笛でも吹きそうなバクラを睨みつけ鼻を鳴らしたが海馬は相手にせず校舎に姿をけした。
「ほら、とれたぜ」
「どーも」
 最後の花びらを風に流したアテムはぐぐっと伸びをして息を吐き出す。
「俺も相棒たちのとこ戻るぜ。お前は?」
「……俺様はもう帰るぜ」
「そうか、じゃあな」
「また、な」
 言ってから気がつく、まさか自分が『またな』なんて言うなんて。盗賊王のときは出会ったやつは片っ端から殺してやったものだからそんな別れの挨拶などしたことなかったのに。アテムの自然な言葉にながされ普通に口から出てしまっていた。
(なんてこった……この俺様がよぉ)
 頭を抱えたくなるような羞恥にみまわれバクラは赤くなってしまった顔を隠すようにアテムに背中を向けて足早にその場を後にする。
 後に残されたアテムはその後ろ姿を少しだけ見送ってから遊戯たちの待つ教室に向かった。








 はじめまして新入生の皆さん。
 童実野高校へようこそ!





おまけ⇒



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