星狐
□隣にいるのは
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失って初めて、それが自分にとって如何に大切な存在だったのか気付いた。
だって、いつの間にかそこにいるのが当たり前になっていたから。
珍しく一人での任務を終えて母艦に帰った俺は、部屋に入るなりスリッピーに言われた言葉に耳を疑った。
「え?ファルコが出ていった!?」
思わず聞き返す。
「そうなんだよフォックス!フォックスが任務のためにここを出た後すぐ、いつの間にかいなくなってて、もう二週間も帰ってないんだ〜!」
「そうなのよ。ファルコのことだからそのうち帰ってくると思ってたんだけど、念のため部屋の中を確認したら空っぽになってたの」
「部屋の中が!?ッ見てくる!」
「フォックス!?」
名前を呼ぶクリスタルの声も無視して、俺は急いでファルコの部屋へ走った。
「ファルコ…?」
いないと分かってはいるが、もしかしたらというわずかな希望にすがってファルコの名前を呼びながら部屋のドアを開ける。
当然、ファルコはそこにはいない。
それどころか何も無かった。
「…嘘だろ?」
主を無くした空虚な部屋で、俺はしばらく呆然としていた。
「ファルコ…。なんで………」
なんで何も言わずに出て行ったんだ?
俺達といるのが嫌になったのか?
…俺のこと、嫌いになったのか?
そう考えたら、何故か胸がズキンと痛んだ。思わず床に膝をつくと、何か白いものが視界に入った。
俺は、部屋に備え付けられた机の傍に落ちていたそれを拾い上げた。
それは、ファルコが俺に宛てた手紙だった。