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□月と涙に惑わされ
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満月が眩しかったからだろうか。
その日、俺は珍しく夜中に目を覚ました。
再び寝る気にもなれず、なんとなく外に出る。

しばらく歩いた後、俺は少し離れたとこに人影があるのに気付いた。

あれは…ウルフ?

ウルフが一人、木に寄りかかって何やら寂しげな表情をしていた。
いつも傍若無人な彼にしては珍しい。

なんとなく、絵になると思った。
月が妙に似合うのは、やはりあの銀の毛並ゆえだろうか。

そのまま離れた場所から眺めていると、不意に、彼の目から涙が零れた。

月の下、ただ黙って涙を流す姿に俺は驚くよりも思わず見惚れた。

『 』

そして、その口からこぼれた俺の知らない誰かの名前。

俺はただそれを遠くから見つめながらこの理由の解らない胸の痛みに耐えた。

…触れたいと思った。
体でなく、心に。

その夜、俺は月と涙に惑わされ一匹の狼に恋をした。

終わり

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