スマブラ

□夜のキッチン
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ゴロン、と何度目かの寝返りをうつ。
いつもはベッドに入ればすぐに眠くなるのに、今日は何だか目が冴えて眠れない。
僕は、一旦寝るのを諦めることにした。

「キッチンに行って、ミルクでも飲もうかな…」

同室のネスを起こさないよう気をつけて、そっと部屋を出る。
流石にもう皆寝てるみたいだ。
廊下はところどころ間接照明がついているだけで人の気配は無い。

「…」

僕は少し怖くなって、速足でキッチンへ向かった。

キッチンに近づくと、何故か明かりがついていた。

「…誰かいるの?」

そう言いながら恐る恐るキッチンを覗くと、ウルフさんが一人でお酒を飲んでいた。

「あ?誰かと思ったらリュカか。ガキがこんな時間に起きてんじゃねぇよ」

「ご、ごめんなさい…」

ウルフさんは少し苦手だ。
…怖いから。

「謝るぐらいなら、寝ろ。なんだ、腹でも減ったか?」

「いえ、その…。寝られなくて…。ミルクでも、飲もうかなって…」

「そうか…」

気まずい沈黙。
僕はキッチンに来たことを後悔した。

どうしよう…。
部屋に戻ろうかな…。

ガタッ

突然、ウルフさんが立ち上がった。

「ふぇっ!?」

びっくりして思わず声を出す。
だけどウルフさんはそれに構わず冷蔵庫の方に歩いていった。
冷蔵庫の扉を開けて、中を覗く。

「チッ、大したもん入ってねぇな…」

どうやらツマミを物色してるみたいだ。
…今の内に部屋に戻ろう。
僕はこっそりキッチンを出ようとする。

「オイ!リュカ!」

「!?はっ、はい!」

急に名前を呼ばれた。
黙って行こうとしたのが気に触ったのかな…。
恐る恐る振り向くと、ウルフさんが僕に牛乳の入ったパックを差し出していた。

「え…?」

てっきり怒られると思っていた僕は拍子抜けした。

「牛乳、飲むんだろ」

「あ、ありがとうございます…」

「フン。ついでだ」

そう言ってウルフさんはさっさと僕に背を向けてまたお酒を飲み始める。
慣れないことをして落ち着かないのか、尻尾がせわしなく動いている。

…ウルフさんって、思ってたより怖くないのかも。

カップに注いだミルクを飲みながら僕はそう思った。

終わり

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