スマブラ

□煙草の代わりに
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元気良く遊ぶ子供達。
己を鍛える為に剣を合わせる青年達。
…平和な光景だ。
俺は、それらを遠目で眺めながらいつもの様に煙草を吸う。

何時からかこの平和な日々に慣れてしまった俺。
少し前の俺が見たら間違いなく「腑抜け」というだろう。
最初はただ居心地が悪かったが、今はこんな世界も悪く無いと思える。

そんなことを考えていると、いつの間にか手に持っていたはずの煙草が無くなっていた。

「…この前、『吸うなら人のいない所で』って言ったわよね」

そう言われて声の主のを見ると、サムスが俺がさっきまで吸っていた煙草を持って立っていた。

「…アンタが来るまではここも『人のいない所』だったんだがな」

「そう。でも今は私がいるわ」

「それはそうだが…」

屁理屈だ。無茶を言わないで欲しい。

そう思いながらも口には出せず、とりあえず「悪かった」と謝った。
何故か俺は彼女に口では勝てないのだ。
…惚れた弱味ってやつかね。

「全く、こんなもの吸って何がいいんだか。理解に苦しむわ」

「別に煙草じゃ無くてもいいんだが…何かくわえてないと口元が寂しいんだよ」

「飴でも舐めてればいいのよ」

「ははっ、勘弁してくれよ。何処の世界にそんな傭兵がいるっていうんだ?」

「…ここによ」

言いながら彼女は俺の口に何かを押し込んだ。
甘いような苦いような、それでいて少し香ばしい味が口の中に広がる。

「コーヒー味の飴よ。ピーチから貰ったのだけど…煙草の変わりに貴方にあげるわ」

「…そりゃどうも」

一瞬だけ俺の唇に触れたあの感触。

「…物足りないな」

「まぁ、所詮は飴だものね」

そうじゃ無い。
触れたのが指先だったことが物足りないんだ。

そんなこと言える訳も無く、「やっぱり煙草だな」と言って笑う。

だけど、もしあの感触をいつも味わえるのというのなら、煙草の変わりに飴でも悪くない。
指先でなく唇なら、煙草は一生止めると誓ってもいい。

まぁ、どちらにせよただの妄想なんだがな。

終わり

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