novel

□ひなどりたち
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それは、ゆっくりと、こちらを見たようだった。

半透明の、くらげのような、けれど人の形をしたもの。

バーンツヴェックで漁をしていた島民が、漂っていたのを発見し、アルヴィスに連絡をした。

それが、かつて失われた人の形をしていたために。

それは、
それは、


それは、目の前にいるのが誰なのかを認識したらしく、こちらに向かって、声、を発した。

声というより音だった。

それは、自分のよく知る名を、発した。


「かずき」


その名が、自分の息子の名だということに、一瞬置いて気付く。
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