novel

□青い闇
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永遠をもぎ取られた瞬間。

常々、恐れていたことが現実となった。

一騎がいなくなった。

永遠に。



よく、「亡くなってもなお影響力を持つ」と、故人を形容するけれど、亡くなった人は、いなくなった人は、何もしない。

影響があるように錯覚するのは、それは全て彼が「ここにいた時」に成されたことが、今表面化しているのだ。

だからこれから、「いなくなった」彼が、自分に何かをしてくれることは、ない。



一騎がいなくなってから、遠見は僕の部屋を訪れるようになった。

形は歪だが、味はそこそこな菓子らしきものを手土産に。
一騎に作り方を教わったというからそれを口にしたのだが、彼女はいたく喜んだ。
料理上手な姉には未だ及第点をもらっていないらしい。


以前は苦手にも感じていた彼女の真っ直ぐな瞳に、今は臆することはない。

もう何も隠すものはない。後ろめたいこともない。
自分自身不得手だったセルフコントロールもあれから自然に出来るようになった。

とても大事なものをなくしてしまうと、人間、なんとか生きる術を探すらしい。
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